SUBARUの“国内における”フラッグシップであるレヴォーグの開発者インタビューをお届けする。セグメントからすればアウトバックやフォレスターがフラッグシップとされるべきなのだが、そこにはSUBARUの“お家事情”というものがある。
「自動車安全性能2020 ファイブスター大賞」を受賞して大喜びしたり、半導体不足で減産を強いられたり(アイサイトXの心臓部にはザイリンクスの「Zynq UltraScale+ MPSoC」という16nmスケールのデバイスが使われている。このチップは全量がTSMCで生産されている。そしてTSMCは……)と何かと慌ただしいSUBARUであるが、その中で開発を担当するエンジニアはどのような心持ちで開発に当たっているのだろう。
やる気満々、闘志むき出しの開発者、五島賢さんのお話は刺激的で人間的で非常に面白い。
カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したレヴォーグ開発者の奮闘を、とくとご覧あれ。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):はじめまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。今日はよろしくお願いします。新しいレヴォーグで高速から凍結した山道、さらにはそこに新雪が積もり、翌日には雨が降ってグシャグシャのシャーベット状になるという、スキーとしては最悪の、しかしAWDの試乗には絶好のコンディションで、たっぷりと試乗してまいりました。
SUBARU商品企画部 プロジェクトゼネラルマネージャー 五島 賢さん(以下、五):本当ですか。それはありがとうございます。お楽しみいただけましたか?
F:それはもう最高に楽しかったです。やはりSUBARUは雪道のクルマだなぁ……と再認識いたしました。フロストベルト(冬になると凍てつく米国・ニューイングランドのすべての州と中部大西洋沿岸および中西部地域の多く)で絶大な信頼があるのもよく分かります。レヴォーグのモデルチェンジは何年ぶりになりますか?
「インプレッサの評判がいいわけですよ」「はあ……」
五:初代が2014年に出ましたので、ちょうど6年ですね。
F:先代との一番の違いは何でしょう。
五:初代は「革新スポーツツアラー」というコンセプトで開発したのですが、私が今回この仕事を受けて、さて何をやろうかと考えた時に思い付いたのが、その「革新」を超えるレベルまで引き上げよう、ということです。何かひとつだけではなく、本当に全方位で前の「革新」を超えるレベルまで引き上げようと。そこが初代との差です。
F:全方位で引き上げる。これはまた大きく出ましたね。
五:初代のレヴォーグが2014年に出て、その2年後の2016年に現行のインプレッサが出たんです。日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したクルマです。
F:はい。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用した最初のクルマですね。
五:そうです。やはりSGPがすごくよくて、我々レヴォーグチームからすれば、「いやいや。本当はレヴォーグのほうがいいんだよ」といくら言っても、お客さまの反応は正直でした。やっぱりインプレッサの評判がいいわけですよ。たくさん売れたし。
F:ははぁ……。
五:だから今回、レヴォーグを企画するに当たっては、1年後か2年後か分かりませんけれども、次にインプレッサがモデルチェンジしてきても、全く追いつけないくらいのところまで高めちゃおう、という思いがありまして。
F:いやあの……ちょっと待ってください。社内ですよね。同じSUBARUじゃないですか。そこまで対抗意識があるんですか。
五:そりゃありますよ。同じ社内でも違うクルマなんですから。
F:あいつらにゃ絶対負けねぇよ、というのがあるんですね(笑)。
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