もはやターボとは感じさせないトルクの立ち上がりもいい。ターボラグを一切感じさせず、大排気量車のように、走り始めからトルクが厚い。逆に言えば“ドッカン感”は皆無なので、自分がターボ車に乗っていることを実感することができない。ここも「古き良きSUBARU」を愛する旧来のファンを悲しませる要因になるのかもしれない。このエンジン、先代の1.6リットルから200ccほど排気量が増しているが、重量は補機類込みで約5キロも軽くなっている。大きくなったのに軽いのだ。エンジンの開発には相当な苦労があったのだと思う。この辺りは開発者インタビューで詳しく伺おう。

雪道最強。SUBARUのAWD。
雪道最強。SUBARUのAWD。

 SUBARU自慢のAWDはアクティブトルクスプリット式で、普通に走っていれば前後60:40のトルク配分がなされている。賢い電子制御により、状況に応じてその配分が変わっていくとのことだが、そのありがたい仕組みが、いまどれほど利いているかは分からない。

 ホテルは標高1500メートルに建っている。ホテルまでのラスト10マイルの路面はカリカリに凍っている。夜の11時。この時間に走っているクルマは一台もない。

 少しペースを上げる。何も起こらない。ドライな道を走るように、何事もなく走り抜けていく。もう少しペースを上げる。“何となく”だが、電子制御が利いているのが分かる。さらにペースを上げる。尻がズルっと滑り、クルマが慌てて修正してくれる感覚が尻とステアリングを持つ手に伝わってくる。これ以上飛ばすとヤバそうだ。クルマと相談しながら、できるだけ速いペースを維持して走る。

悪路も“氷あずき”も問題なし

 チェーンを履く大型車がほじくり返したのだろうか。鏡のように平らに凍った路面の途中に、所々大きく削れて段差になっている部分がある。それらを何事もなく、軽くいなしていく。高い高い剛性を感じる。新しいレヴォーグは、フルインナーフレーム構造を新採用した上に構造用接着剤や樹脂製レインフォースの塗布面積も盛大に拡大している。ねじり剛性は旧型と比べ44%も向上しているのだという。44%ですよ奥様。同じ会社の同じクルマでそんなにドカンと上がるものなのでしょうか。旧モデルはそれで大丈夫だったのか? と逆に訝しく思ってしまう。

ホテルグランフェニックス奥志賀に到着したのは夜の11時。ご覧の通り下はカリカリに凍っている。
ホテルグランフェニックス奥志賀に到着したのは夜の11時。ご覧の通り下はカリカリに凍っている。

 3月の奥志賀。初日、2日目はよかったのだが、3日目がいけなかった。

 リフトが運休してしまうほどの大雨が降り、ゲレンデがグシャグシャになってしまったのだ。雨と雪が交互に降るスキーヤーにとって最悪の天候はしかし、SUBARU最新のエンジンとAWDを試すには最高のコースをつくり上げる“慈雨”であった。明け方から降り続いた雨は轍に容赦なく水たまりをつくっていく。そこをクルマが走りグズグズとかき回していくのだからたまらない。ある部分は雪、ある部分は氷、そしてある部分はシャーベット、と、それはそれは走りにくい路面なのだった。

“氷あずきの最後の一口”くらいにグシャグシャになってしまった路面。多くのクルマが往生する中をレヴォーグは鼻歌で走り抜けていく。
“氷あずきの最後の一口”くらいにグシャグシャになってしまった路面。多くのクルマが往生する中をレヴォーグは鼻歌で走り抜けていく。

 こんな厳しい状況でも、やはりレヴォーグは頼もしかった。他のクルマが往生をするのを尻目に、楽勝で走り抜けていく。そしてすべての状況において、ともかく乗り心地がいい。しっとり高級車の味わいがある。ZF社製の高級サスペンションは限りなくしなやかで、“懐が深い”印象だ。特にフロントの沈み込みがいい。ガチガチに固めてロールを抑えているのではなく、しっとり柔らかく、包み込むようにコーナリングしていくような印象だ。

 うーん。いいですよこれは。今までのSUBARUとは大きく違う。新しいレヴォーグは、一言で乱暴にまとめてしまえば「大人のクルマ」になったと言える。

フロントウィンドウに吹き付けるのは、雪でもみぞれでもなく完全な雨。雨の中でスキーをするほどの根性はないので、滑らずにサッサと帰ります。
フロントウィンドウに吹き付けるのは、雪でもみぞれでもなく完全な雨。雨の中でスキーをするほどの根性はないので、滑らずにサッサと帰ります。