杉:空力といわれるカウルの造り込み、ミラーやフロントフェンダーの形状、そういったところも今回結構手を入れています。それらを工夫して収れん性を高めています。ただ、それでもやっぱりフェルさんが高速で安定フィーリングがよろしくない、ちょっと怖いんだと感じられたのであれば、そこはやはり軽さから来ているのだと思います。重さは安定感に直結しますから。
F:なるほど。それはそうですよね。杉山さんのキャリアの続きをお願いします。入社以来、ずっともうシャシー設計一筋という感じですか。
杉:そうですね。そうなります。最初はオン・オフをやりました。今で言うCRFみたいなモデルですね。SL230の2代目のフレームは僕がやったんです。
ヤマハのセローは素晴らしいと思います
F:オンロードもオフロードも楽しめるこのオン・オフという存在。ヤマハだとセローに当たりますよね。でもあれはもう生産をやめてしまった。ライバル不在になり、このカテゴリーにおいてはホンダの独壇場ということになりますか?
杉:いや、カワサキさんのKLX230があります。あれもいいバイクです。
F:開発に際しては、やはりセローをかなり意識されたのでしょうか?
杉:他社製品を僕が話すのもアレなんですが、あの時代にあのような企画を出してきたこと。つまりピョンピョン高く飛べることが最高だ、背が高くサスペンションストロークが大きく、衝撃吸収性も高いほうが偉いんだという雰囲気の時に、ああいう背の低い足つきのいい商品を出せるのは、商品開発としても、企業のあり方としても素晴らしいなと思いました。
F:ホンダはセロー的なバイクを出さなかったのですか?
杉:これは言ってもいいのかな? まあ機密情報でもなんでもない公知のことだからいいですか。もちろんウチでも出しましたよ。XLディグリーというバイクです。最初はパステルカラーにして、女性ウケのいい線を狙ったりして。でもダメでしたね。お客様からはそっぽを向かれました。
高橋マンちゃん:これですね。ネットで写真が出てきました。

F:いいじゃないですか。普通に乗りやすそう。どうしてダメだったんだろう。色が悪いのかな。昔、清里にあったメルヘン系のペンションみたい(笑)。
杉:その後にSL230とかも出したのですが、セローの牙城を崩すことはできませんでした。セローは同じコンセプトのままで35年間。本当に凄いことだと思いますよ。エンジンもいいですしね。アクセルを開けたら開けた分だけブブっと来るようなあの特性、あれはすごくいい。あんまり他社製品を褒めるのはアレなんですけれど……(苦笑)。
F:今回のCRFのエンジンは粘りもあってとてもよくなりましたよね。あれは完全な新設計なのですか? CRFだけのものですか?
杉:いえ。レブル250やCB250と同系のエンジンです。基本的に「このバイクだけ」というエンジンはありません。エンジンを好き勝手に開発してしまうと、どんどん種類が増えてしまいますし、その分投資も増えてしまいます。最小限の開発で、どの部品をどう変えればこのCRFの求める出力特性になるのかというのを割り出し、どのようにその特性を出していくか。ここがエンジニアの腕の見せどころです。今回のCRFで言うと、エアクリーナーボックス回り、マフラー回りの給排気。あとはインテークカムシャフト。これを変えました。
F:なるほど。ひとつのエンジンを、なるたけたくさんの車種で使い回す。するとこのエンジンはスクーターでも使っているのですね。
杉:いやいや。スクーターでは使いません。スクーターは別です。
F:あれ? 250ccのスクーターがありますよね? フォルツァでしたっけ?
杉:ありますけれど別のエンジンです。ていうか、バイクとスクーターって別の乗り物なので。
F:それはどういう……。

と、いいところで以下次号。会社に行く時間です。最近本業がメチャ忙しいんですよ。
それではみなさままた来週!
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