杉:僕らオフロード業界の符丁で、メーカーを色で言うんです。ホンダなら赤、ヤマハさんなら青、カワサキさんは緑、スズキさんは黄色、と。あとはKTMがオレンジとかね。
F:なるほどなるほど。メーカーを色で言う。勉強になります。ありがとうございます。するとさっきのひどいバイクというのは、○色だから○○○のバイクですね(笑)。
ホンダ二輪広報及川氏(以下、及):そこはちょっと勘弁してください。他社製品の批判はまずいので。
マイトのY:ご安心ください。編集の時に落としますので。
F:CRF450Lでしたっけ? 一昨年くらいまで極端なバイクがありましたよね。モトクロス車に保安部品だけ付けたようなすんごいバイクが。わずか1年で生産終了になってしまいましたが。
杉:そうですね。あれはオフロード専用車という扱いで、CRF450Rをベースにしたモデルです。ホンダの中でもオフ車と呼んでいました。ナンバーは付いていましたが。
F:あれはどうして早々に生産を終了してしまったのですか?
杉:私は担当外なものですから。その辺の経緯はちょっと……及川くん、なんで?
及:その部分につきましては、正直なところ日本の市場に関してお客様からのご注文、ご要望が予想より多くなかったといったという背景がございましてですね……。
F:要するに売れなかったということですか?

及:そういうことになりますです、ハイ。あとはですね、あのバイクは管理が非常に大変だったという部分も大きいと思います。CRF450Lは、走行距離数に応じて分解メンテナンスを行わなくちゃいけない、非常に管理の大変なバイクだったんです。レースをされる方だったらごく日常のことだと思うのですが、一般道を走る普通のライダーにとっては、少々苦痛であったのではないかと思います。1000キロでこれ替えて、3000キロであれ替えて、とメンテナンススケジュールが厳格に決められていまして、それもオイルやフィルター交換だけではなく、エンジンの排気・吸気バルブのクリアランス調整とか、そういったものも含まれていましたので。
F:なるほど。かなり手間がかかりますね。
及:フェルさんが乗っていらっしゃるハスクもかなり手がかかると思いますが……。
F:僕のは距離にかかわらず、2回乗ったら1回オイル交換。そして4回乗ったら1回オイルフィルター交換を励行しています。今のところはそれが楽しみになっていて、あまり面倒とは感じません。むしろどんどん愛着が湧いてくるような感じです。
杉:そういう方ばかりじゃないんですよね。ほとんどの方はやっぱり乗りっ放しがラクなわけで。
「はっさん」って何ですか?
F:ここに至るまでの杉山さんのキャリアを教えてください。ホンダに入社してからどのような仕事をされてきたのですか?
杉:僕はずっと「車体設計」といわれる部門でやってきました。エンジンとサスペンション、電装“以外”を設計するところです。
F:フレームの設計ということですか?
杉:シャシー。シャシーの設計ですね。だからつい「はっさん」とか「ねじれ」「たわみ」という言葉を使ってしまう傾向があるんです(笑)。
F:はっさん……はっさんとは何ですか? 発射の発に散るという字で発散ですか? ストレス発散の発散。
杉:そうそう。その発散です。走っていて、こう車体がブラブラグラグラ揺れたり振れたりしてしまうことを言います。
F:Yさんはストレスを溜め込み過ぎね。少し発散させたほうがいいよ(笑)。
担当編集マイトのY:うるさい! ストレスの原因の9割はあんたじゃないか! またストレスになるようなことを言うな!
F:ストレス溜まってるなぁ……。
杉:走っていて外乱がポンと入った時に、その発散がスッと収れんする。この度合いを「安定性」と言います。新しいモデルのCRFは横剛性を25%落としましたが、この安定性は前モデルと同等にしています。
F:剛性が低いのに、どうやって発散を収れんさせるのですか?
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