:滑ると言うか、やっぱりつぶすのが大変だなと思いました。最初ピットロードに出ていって、数コーナーはさすがに流すじゃないですか。そこでブレーキをかけて感触を確かめる。どれくらい入力をしたら、どの程度タイヤがつぶれるのかを確認する。

F:レースの人がかけるブレーキってどんな感じですか。僕はド素人のヘボなので、タイヤをつぶすという感覚がよく分からないのですが。

:順番としては、フロントブレーキをパッと当てる。グッと握るんじゃなくて一瞬遊びを取るんです。遊びを取って、そこからスッと入れてあげる。フロントフォークがぐーっと入っていく。ぐーって入って、それ以上フロントフォークが縮まなくなると、今度はタイヤがつぶれてくる。我々がスクールで生徒さんに教えるときに、「ぱっ、すっ、ぐーっ」て言うんですけど。

F:「ぱっ、すっ、ぐー」。なるほど。

:そうやってフロントタイヤのつぶれ方を確かめていくんです。コーナーに入る。タッチ方向でスロットルを開ける。スロットルを開けると、荷重はリアタイヤの方に移る。リアタイヤにトラクションをかけたときに、今度はリアがどれぐらいつぶれるのかを確認する。徐々にタイヤの性格がつかめてくる。1周終わって、2周目に入って、ようやくスロットルを開けていく。1周すればだいたいキャラクターが分かりますから。2周目からペースを上げていく。

遅さに身体を慣らしてはダメ(注:プロ限定)

F:2周目でもうペースを上げちゃうんですか。もっと慣れてからの方がいいような気がするのですが……。

:早い段階でペースを上げていかないと、ずっと遅いペースになっちゃうので。遅いのに身体を慣らしちゃダメなんです。すぐにそういう身体になっちゃうんです。

F:へぇ。遅いペースに慣れちゃダメ。勉強になります。

:いやいやいやいや。あくまでプロのライダーの話です。フェルさんは絶対にマネしないでください。

F:でも僕だって速く走りたいです。

:ムチャ言わないでください。まだ免許を取って1年もたっていないんですよね。速く走るよりも、まずは身体をバイクに慣らすことから始めてください。

 ともかくですね……(呆れ顔)……初めてのタイヤ、硬いタイヤだと分かっている。そのキャラクターもつかめてきた。それでペースを上げて、1、2コーナーに入りました。次の3、4コーナーは複合(1つのコーナーの中に異なる曲率のカーブが含まれていること)です。3コーナーに入って、4コーナーに対するアプローチは、3コーナーに入ったら基本的には開けていくだけです。3コーナーに入って、4コーナーのアプローチでスロットルを開けた瞬間にリアタイヤがズルっと滑ったんですよね。それで……。

 それで……運命のハイサイドである。
 不幸な事故は、「偉い人が履くタイヤ」に交換した直後の出来事だったのだ。

 普通の人ならここで引退しそうなものだが、鈴木さんは不屈の闘志でケガを克服し、何とレースに復帰する。

:で、1年後に復帰しました。

F:えぇぇぇぇ!