みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。
フェル2号。長期の入院生活が終わり、ついに退院してまいりました。
セルモーターにイグニッション。さらにはウオーターポンプのシール……と、次から次へと故障箇所が出てきたわけですが、それらをひとつひとつ丁寧に見つけ出し、対処してくださった鈴木オートの鈴木正彦代表には感謝しかありません。ありがとうございます。
鈴木オートの鈴木正彦さんとフェル2号。しかしステップワゴンってすごいなぁ。こんな大型バイクが楽勝で積めてしまうのですからね。
20年落ちのイタ車で、しかも原形を留めないほどのバリバリの改造車。苦労することは買う前から知れ切っています。そもそも免許を取りたての初心者が乗るべきバイクではない。
でも一目ぼれってあるでしょう? こればかりはどうにもなりません。
トライアスロン仲間の持田くん、バイクを通して友人になった赤池くんに付き合ってもらい、早速快気祝いライドに出かけました。いや、大排気量のバイクって本当に楽しいです。オフ車とはまた違う魅力がある。いろいろとありましたが(そしてこれからもいろいろあるのでしょうが……)やっぱり買ってよかったです。
早朝のPAに集合し、海沿いの高速をひとっ走り。楽しゅうございました。それにしてもこのミラー。後ろがまったく見えません。交換しなくては。円形のバーエンド装着型がいいかな。
週末はもちろん林道へ。仲間がどんどん増えていきます。走るのも楽しいですが、こうして新しいつながりができていくのはもっと楽しい。古くからの友人から連絡があり、久しぶりに会って一緒に走ってみると実は大変なエキスパートだったりして、意外な一面が見えたりもする。バイク仲間って、飲み仲間とか仕事仲間とはまた違う“特別なつながり感”がありますよね。
しかし古い友人のMくんがかようなエキスパートとは。いや恐れ入りました。
ということで本編へとまいりましょう。
林道俳優大鶴義丹氏のインタビュー、第2弾です。
私をバイクの世界へ誘ってくれた恩人である俳優の大鶴義丹氏。
世間的には個性派俳優として知られているが、小説も書き脚本も書き映画の監督までしてしまう。表現が的確で実に分かりやすい。
テープ起こしの文章を読み返すと、「なるほど」と唸らされるような言葉が随所に出てくる。
インタビューの記事は「オコシ」と呼ばれるテープ起こしの原稿を基に書いていくのだが、義丹氏の言葉は加工ナシでそのまま原稿になるようなセンテンスばかりである。
それじゃさっさと出稿しろとマイトのY氏の叫び声が聞こえてきそうだが、そこはほらアレですよ、昨今の半導体不足により、会社の仕事が最近マジで忙しくて……。
マイトのY(以下、Y):最近のフェルさんを見ていると、本当に心の底からバイクを楽しんでいて、どんどん仲間も増えていって、正直羨ましいなと思う部分もあるんですよ。これは読者のみなさんも感じていることだと思うのですが。
フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):楽しいですよ。本当に楽しい。バイクを始めてよかったと心の底から思います。Yさんも昔は乗っていたんですよね。
Y:ええ。大学時代にクルマと一緒に合宿で中免まで取ったんです。それで上野駅周辺のバイク屋さんに行ってみたんです。
大鶴義丹氏(以下、義):昔はあの辺りにたくさんショップがありましたからね。今はほとんど残っていないけど。
Y:そうしたら「あ? なんだ坊主。なにしに来たんだ?」みたいな感じでえらく雑に扱われて。初めて乗るならこれでも買ったら? とボロボロの中古を見せられて、もうファーストコンタクからして印象が良くなかった。それでもう少し愛想のいい店に行って、最初に買ったのがホンダのCBX250S(こちら)です。ミニカウルの付いた小型軽量のかわいいバイクで。(ネットで検索し)ああ、久しぶりに見るとやっぱりいいなあ。
義:ありましたね。いいバイクなんだけれど、ブームに乗れずにわりと短命に終わってしまったモデル。
バイク初心者のときに怖い思いを
Y:はい。免許を取って気に入ったバイクを買って、大喜びで乗り始めたのですが、まだ若かったから知恵も度胸もなくて、「おかしい、なにかうまく乗れていないのは分かるけれど、でもどうすればいいのか分からん」と、すったもんだしていたら、事故に遭ってしまって。
全員:えぇ! 事故に。
Y:テレビ局の出口で制作会社のクルマにぽーんとはねられて。幸い大したケガもなかったのですが、バイクは全損してしまった。相手の保険で結構なお金が来たので、よせばいいのにそのお金で初代のVFR400Rを買ったんです(こちら)。これがまたトルクがぶっとくて、アクセルをひねると猛烈に加速して、速くて速くてもうどうしようもないようなバイクで。
F:事故太りってヤツだね。事故でもうかっちゃうパターン(笑)。
Y:そうそう(苦笑)。でも、私ごときがこんなのに乗っていたら、そのうち間違いなく死んじゃうなとも思いました。
あとは方南町(東京・杉並)の辺りを走っていたら、私の振る舞いがなにか気に入らなかったのかどうか、でかいハイソカーでずっと追いかけ回されたりして。エラく怖い思いをしたこともあって。
義:方南町ってウチの近くじゃない。でも追っかけ回したのは僕じゃないですよ(笑)。
Y:ショップの感じは悪いわ、街で事故るわ、追いかけ回されて怖い思いはするわで、本当にもうロクな目に遭わなくて。それで乗るのをやめてしまったんです。
F:Yさんみたいに、バイクで嫌な思いをしてやめてしまった人って結構いるのかもしれないね。昔の嫌な思いが頭をよぎるから、リターンもしない。
Y:結構いると思いますよ。でもフェルさんはリターンどころか、この齢から乗り始めたんですよね。ちゃんとしたステップを踏んでいくと……まあフェルさんの性格もあるのでしょうけれど……こんなに幸せになれるのかと。みんなに教えてもらって、みんなに助けてもらって、本当に楽しんでいるじゃないですか。
F:だって俺、習おうとしているもの。なにしろ去年免許を取ったばかりで、日本のライダーの中では恐らく下位0.01%くらいの位置にいるわけでしょう? 99.99%の人は俺よりも先輩で、それだけ上手なはずだから。そんな人たちに追いついて追い越すには、もう習うしかないじゃないですか。教わるしかないでしょう。
高橋マンちゃん:フェルさんって自分勝手でワガママで横暴だけど、教わるという姿勢だけはありますよね。スキーもよく教わっているでしょう。
F:この齢でアレコレ試行錯誤なんかしていられないからね。うまい人に教わるのが一番の早道よ。
Y:言っていることは分かりますよ。でも誤解を恐れずに思い切って言うと、街中を走っているライダーの中で、キチンと教わってステップを踏んで上達している人がどれくらいいるのか。
Y:みんながフェルさんみたいにエキスパートに教えてもらえるわけじゃありません。だから、「仲間がいないけれどリターンしたいライダー」に、なにかおすすめのルートがあれば、企画的には非常にありがたいのですが。
F:義丹さんは、もともとどなたかに乗り方とかマナーとかを教わったことがあるのですか?
義:16歳で免許を取って、バイクを買おうと思っていたのだけれど、親が誰かから入れ知恵されたみたいで、「オンロードはヘタしたら死んじゃうから許さん。モトクロスじゃないと乗っちゃダメだ」と言い始めた。それで仕方なしにヤマハのDT200R(こちら)という当時出たばかりのオフ車を買って、河原を走り回ったりしていたんです。我流だけれどだんだん速くなってきたので、丹沢の方まで遠征するようになって。今は宮ヶ瀬というダムができちゃったけれど、昔はダムなんかなくて、今の湖底に当たる場所には迷路のような林道があったんです。
F:へぇ! 宮ヶ瀬ダムの底に林道が。あそこはそんなに古くないんですね(ダムの完成は2001年)。
義:そこは林道レーサーの聖地のような場所で、土日に走りに行くと、向こうの主みたいな人がコーナーで仲間を連れて5人ぐらいでこんなふうに腕を組んで待っているの。そこをブーンと飛ばしていくと、なんだあの小僧、挨拶がねぇ、と(苦笑)。
F:ここを走るなら俺らに挨拶せんかい、と(笑)。
大鶴義丹氏はいかに鍛えられたか
義:そうそう。それで5台で追いかけて来るわけですよ。そこで抜きつ抜かれつのバトルになる(笑)。何周か走って止まると、その主の人が寄ってきて、「お前、結構走れるじゃねぇか。俺らの仲間に入れてやる」とか言われて。完全に昭和ですよ。昭和の世界(笑)。
F:あははははは。
義:翌週から僕もそのコーナーに一番下っ端として立たされるようになって。見たことない人が飛ばしてくると、「おう、鶴。お前あいつを追いかけて抜いてこい。負けるなよ」とか言われて。返事はもうハイかイエスしかないワケですよ(苦笑)。
F:いいですねぇ。実にいい話だ。
Y:そ、そうですか。私はヒドい話にしか聞こえませんが……。
義:そのグループが、実は近くの相模原にある有名なオフロードショップのメンバーだったんです。当時バハ(メキシコのバハカリフォルニア半島で1967年から開催されている「Baja 1000」というオフロードレース)とかにも選手を出しているようなすごい店で。林道で幅を利かせていた人たちは、そのショップの下っ端連中だったんですね。レースには出られないけれど、普通の走り屋よりは速い程度の。その下っ端の下っ端グループに僕が入ったんです。そこでは鍛えられましたね。上下関係も嫌というほどたたき込まれて。
F:なるほど。紹介とかではなく、走りを見込まれてヘッドハンティングされたわけですね。
高橋マンちゃん:フェルさんもわりと行った先々で知り合いが増えたりしますよね。
F:俺の場合は義丹さんと逆パターンで、あまりのヘボさを見るに見かねて助けてもらう感じ。相模川沿いの猿ヶ島で練習していたら、斜面で転んじゃって自分じゃ起こせなくて泣いていたら親切な青年が助けてくれたりして。その人とは今でも付き合いがありますね。家に呼んでもらったりして。
Y:フェルさんの話を聞いていると、バイクに乗っている人っていい人ばかりなのかと思いますよね。本当に楽しそう。
F:Yさんはまたバイクに乗ってみようとは思わないの?
Y:思わなくはないですけれど……。
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