みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今週も明るく楽しくヨタ話.....の前に業務連絡。
走りながら考えるの新年第1回は1月1日に掲載されます。4日月曜日ではなく、1日金曜日です。めでたい正月を、不肖フェルの文章と供に健やかにお過ごしください。
相変わらずバイク三昧の生活を送っております。
フェル2号のドゥカティは納車翌日に電気系統のトラブルに見舞われまして、ツーリングはしばしお預けの状態となっております。デビュー走行に付き合ってくださる予定だった井手くんと嶋本くんには大変な迷惑をかけてしまいました。焼き肉をおごるのでどうかご容赦を。
土曜日は富津のモトクロスコースに練習に行きました。
ここで猿ヶ島で親切にしてくださった若村ご夫妻とバッタリ。
日曜日は林道俳優大鶴義丹氏、元ホンダのワークスレーサー宮城光氏、天才ラリースト三橋淳氏ほかバイク界の重鎮のみなさまと楽しい林道ツーリングへ出かけました。
いやみなさま速い速い。ここしばらくコツコツと練習してきたので、少しはついていけるのではないかとタカをくくっていたのですが、全くダメ。どだいスピードが違う。ドジでノロマな亀です。先は長い……。
ホンダのアフリカツインとかドゥカティのスクランブラーとか、本来狭く険しい林道を走るようなバイクじゃないんですよ。それなのにみなさんスイスイと楽勝で走り抜けてしまう。速いのに危なげがまったくない。この安定感はどこからくるのでしょう。
ハスクにベータにハーレーにBMWにホンダにドゥカティにBMW、と大小のバイクで林道を楽しく走ってきました。いやバイクは本当に楽しいです。
12月らしからぬポカポカ陽気が続いていましたが、ここへ来て一気に気温が下がってきました。冬らしい気圧配置になり、心配されていたスキー場の雪不足も一夜にして解消された一方で、関越道での立ち往生など、大雪による被害も出始めました。
関越のニュースを見ていてふと思ったのですが、雪の中でEVに乗っていて、そのまま閉じ込められてしまったらどうなっていたのでしょう。自衛隊が燃料を持って救助に来てくれても、BEV(テスラ、リーフなど、バッテリーのみ搭載の電気自動車)ではどうにもなりません。自分のクルマを捨て、取りあえずは近くのトラックに「泊めてください」と助けを求めるしかありませんよね。想像するだに恐ろしい。
今回走った林道も一気に気温が下がり、日陰の部分はものの見事に凍結していました。不用意に突っ込んだら簡単に転倒してしまいます。道路脇の砂利の上を、ソロリソロリと押して無事に脱出してきました。こういうときはチームワークが肝心です。
ということで本編へとまいりましょう。
久々の輸入車インプレッション。ランドローバー・ディフェンダーの登場であります。
今号からお届けするのは、ランドローバーのディフェンダーである。
“絶対的王者”ランクルや、ジープと比較されることの多い、本格派オフローダーである。
1948年に造られたランドローバー シリーズ1をその起源とすれば、実に71年ぶりのフルモデルチェンジ。シンプルで強靭な車体だった旧型の信頼は厚く、世界各国の軍用・警察車両としても広く使用されてきた。
「ディフェンダー」の名が冠されるようになったのは、比較的最近のことで、安価なディスカバリーがラインナップに追加されたのとほぼ同じタイミングの1990年から。それまでは「ランドローバー90/110/127」と呼ばれていた。数字はホイールベースのインチ表示である。クルマの大きさがそのまま車名になっていたのだ。新型も5枚ドアが110、3枚ドアが90とイメージ継承のために命名されているが、実際のホイールベースは3020mm(118.9インチ)である。
豪華で快適なので、旧型オーナーからは「らしくない」とも言われる新生ディフェンダー。
ロングドライブから砂地走行まで、じっくりと味わってきた。
71年ぶりに生まれ変わったディフェンダー。「武骨」という言葉がピッタリだった外見は、かようにモダンになった。
71年ぶりにフルモデルチェンジされたディフェンダー。せっかくの機会だから、少し遠くにドライブに出かけようと思っていた。すると、実にいいタイミングで大昔のガールフレンドから「海が見たい」と連絡があった。
「海が見たい」。まるで安手のメロドラマのような言い草だが、事実なのだから仕方がない。
転職しました、結婚しました、子供が生まれました……何か大きなライフイベントがあるごとに連絡があり、ああそうなのそりゃおめでとう、と食事をしたり軽く酒を飲んだりしてきたのだが、今回は何があったのだろう。優秀な女性だから、子育てが一段落した段階で起業でもしたのかもしれない。送られてきたメールには「会ったときに話す」と記されていた。
ご主人はそこそこに名前を知られている方なので、ここではX嬢としておこう。
「ちゃんとした海が見たい」
フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):ずいぶん久しぶりじゃないの。君がこうして連絡をくれるのは、いつも何か大きな出来事があるタイミングだけれど、今回は何があった。起業でもしたの?
X嬢(以下、X):おいおいお話する。ともかく海に連れていって。
美人である。美人は年齢を重ねても子供を産んでもやはり美人である。
ラゲッジスペース。天井部分の窓にご注目。こうしたギミックもしっかり継承されている。
F:それじゃ海ほたるまで飛ばそうか。今日は晴れているから、東京も横浜もキレイに見える。少し寒いけれど、コーヒーを買ってデッキに行けば“密”も避けられる。
X:そんな人工的なところじゃなくて、ちゃんとした海が見たい。
相変わらず有無を言わせぬ強引さである。出○のよさがそうさせるのだろう。
あ、勘違いしてもらっては困るので付言するが、マクラーレンの回に登場した財閥令嬢とは別人物である。
F:それじゃアクアラインを抜けて千葉の海に行こう。高速もデコボコ道も走れるからちょうどいいや。
X:素敵なクルマね。ランドローバー?
F:うん。ランドローバーのディフェンダー。モデルチェンジをしないで何十年も造り続けてきたのだけど、ここへ来てついに、という感じだね。旧型の最後の最後は結構な駆け込み需要もあったらしい。
死にそうにダサかったステアリングホイールは、新型になりこんなに立派になった。
X:ついに、というのは、やっぱり環境対応が取り切れなくなった、ということ?
F:そうそう。主に環境面と安全面だね。ディフェンダーに限らず、古いクルマを継続して造れないのは、法規対応が難しいからだ。
今度のディフェンダーは真っすぐ走れる
「環境対応」などという言葉がサラッと出てくるあたりで、彼女が並でないことがお分かりいただけよう。それはそれは仕事のできる優秀な人なのだ。
アクアラインに向かう湾岸道路。走行車線を快適に走る。高速が苦手だった旧型とは大違いで、滑るような走行感覚だ。道路の段差を拾うこともない。何よりも新型は緊張感なく“真っすぐ走る”ことができる。これは大きい。
F:もともとは強固なラダーフレームの上にアルミボディを載せた、軍隊でも使われるようなクルマだったんだ。それが今回のモデルチェンジでアルミモノコックに生まれ変わった。後継機種に据えられているけれど、実際は前のディフェンダーとはまったくの別物と思った方がいいね。ところでいまクルマは何に乗っているんだっけ?
X:私はお買い物用にアウディの小さいの。ダンナはメルセデスのGLEで、パパは相変わらずクラウンに乗っているわ。
パパのクラウン。そうだった。彼女はご実家が用意した二世帯住宅に住んでいたのだった。
完全に独立した低層マンションのような作りの家だが、「いつでも孫の顔が見られるように」と、中には双方の世帯から行き来ができるようにドアが付いている。ご主人はさぞかし居心地が悪いことだろう。
F:お父さんはクラウンか。ついにセダンをやめちゃうらしいよね。
X:ちょうどいい機会だから、いまのクルマを最後に運転はやめてもらう。もうトシなのに、「俺は大丈夫だ」なんて何の根拠もなく言っているの。危なくて仕方がないわ。
いずれ「最後のクラウン」にも乗っておかねばなるまい。“深い関係”にあるマツダが開発しているFR車を、何らかの形でトヨタに供給するのは間違いなかろうが、そこに「クラウン」の名が冠されることはないだろう。
X:フェルちゃんは相変わらずご活躍ね。Facebookで見ているわ。最近バイクに熱中しているようだけど、本当に気を付けて。あれはとっても危ないから。
F:なに。俺は大丈夫だ。
X:ウチのパパみたいなことを言わないで。それを言い出したらもう老人よ(笑)。
でも、これでいいのか?
湾岸道路からアクアラインに入る。川崎で大きく右カーブ。結構な速度で進入したので大きくロールする。ロールするのに怖くない。柔らかいのにブヨブヨしない。実に塩梅がいい。
アクアラインの長い長い直線。アクセルを強く踏み込んでみる。僅か2リッターのエンジンでどこまで走れるのか。これがまた力強い。2340kgのズッシリ重い車体をものともせず、グイグイと加速していく。後半の坂も楽勝だ。最高出力300馬力。トルクは400N・mである。数字以上のトルク感がある。
館山道に入る。周囲にクルマはほとんどいない。快適に飛ばす。
速い。静か。揺れない。真っすぐ走る。いい。実にいい。極上のSUVである。
でもこんなのでいいのか? 何というか、ディフェンダーはもっとこう……言い方が難しいのだが……ガタピシしているべきではないのか。必死こいて「御する」クルマではなかったのか? この辺りはインポーターインタビューの際にじっくり伺っておこう。
海に着いた。コンビニでコーヒーを買って海岸に出る。
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