ヘルメットの製作は、ざっくり7つの工程に分けられる。

1:シェルの成形
2:シェルの仕上げ
3:検査
4:塗装
5:塗装検査
6:組み立て
7:最終検査

 こうして並べてみると検査ばかりである。検査は人の目で行われ、「(検査で弾かれるのは)1000個に1個もない」とのことだが、各工程で弾かれて、前工程に戻されるものもある。
 検査検査検査。ともかく検査の連続である。
 「人の命に関わることですからね。見落としは絶対に許されません」
 いやごもっともです。

 それでは早速工場見学へ……と行きたいところだが、見学前に商品開発の方と交わした会話が非常に面白かったので、そちらを先にご紹介しよう。執行役員で商品開発本部長の志田眞之さんである。

SHOEI執行役員・商品開発本部長の志田眞之さん
SHOEI執行役員・商品開発本部長の志田眞之さん

F:自分がバイクに乗るようになってから、がぜんヘルメットに対する興味が増してきました。これはぜひどのように作っているかを見にいきたいなと。それで今回取材をお願いした次第です。ヘルメットはライダーが装着するプロテクター類の中で、最も重要なものだと思います。何しろ頭が割れたら死んでしまいますから。製作者側から見たヘルメットの重要性というのを教えていただけませんか? 宣伝になってしまっても構いませんので。

志田眞之さん(以下、志):これはうんと単純に考えていただければ分かりやすいと思います。例えばオートバイに乗っていない人でも、普通に歩いていて、あるいは走っていて、そのまま何も着けていない状態で転倒してアスファルトに頭を打ったらどうなるか。

F:それはメチャ痛いです。ていうか、打ちどころが悪ければ死ぬかもしれません。

:そう。場合によっては死ぬかもしれません。それが自転車だとどうでしょう。自転車で転んで頭を打ったら。

F:ママチャリでも(時速)20キロは出ている。ロード(バイク)で速い人なら巡航で40キロは出る。間違いなく頭がカチ割れます。

:頭部を保護するものが何もなければ、自転車も相当危ない。それがバイクだとどうなるか。何十キロも、百何十キロも簡単に出るマシンです。ヘルメットなしで頭を打ってしまったら、まず助かりませんよね。

F:うーむ……。

「床に落としたらオシマイ」って本当ですか

:歩いていて転ぶ程度なら、ニット帽を被っていれば軽症で済むこともある。その帽子がもっとぶ厚ければ、もっと丈夫であれば、痛みは減りけがも軽減される。その考え方の延長線上にあるのが我々のヘルメットです。FRP(繊維強化プラスチック)のシェルの中に発泡スチロールの衝撃吸収ライナーがあるというだけで、その安全性は格段に向上する。ヘルメットは本当になくてはならないものですよね。絶対に必要ということが分かりますよね。

F:なるほど。これは分かりやすい。その大切なヘルメットなのですが、よく「床に落としてしまったら、そのヘルメットはもうオシマイ」という話を聞くのですが、あれは事実ですか。バイクのミラーの部分にヘルメットを引っ掛けていて、ツルッと落としてしまうケースなんて少なくないと思うのですが、あれはどうなのでしょう。

:それは落としたときのシチュエーションによって違ってきます。同じ「1メートルの高さから落としました」と言われても、下の状態などは様々なので、一概には言えません。ですから基本的には「1度落としたものは使わないでください」と言っています。外殻がFRPでできているヘルメットであれば、バイクのミラーから落とした程度なら、大丈夫なことも多いのですが、とはいえ……。

F:でもそれがコンビニの駐車場で、運悪く下が車止めの角だったりしたら(笑)。