ホンダが“4度目”のF1撤退を発表した。
 「またか」というのが正直な感想だ。

 10月2日の八郷隆弘ホンダ社長緊急記者会見の直後から、たくさんのホンダ社員、そしてOBの方と連絡を取り合った。

 怒り、悲しみ、落胆、失望、諦め……。誰もが電話口で嘆き、それから異口同音に、「申しわけない、お恥ずかしい」と謝罪の言葉を口にした。

 いやいや、○○さんが謝ることじゃないでしょう。と伝えても、やはり「申しわけない、お恥ずかしい」を繰り返すばかりである。中には感極まって嗚咽を漏らす人もいた。「もう会社を辞めますわオレ」、投げやりに言い放つ人もいた。

 ホンダに何が起きたのか。なぜ“いま”なのか。
 「カーボンニュートラルの実現」を撤退の理由として挙げているが、それで納得する人は一人もいまい(投資家筋は金食い虫のF1撤退を大歓迎のようだが……)。

 今回ムリを承知でF1撤退の理由を直接伺いたく、渡辺さんに単独インタビューをお願いした。「記者会見でお話ししたことが全てです」と木で鼻を括ったような回答が来るのかと思いきや、意外や意外。お受けいたします、との回答が来た。
 以下、渡辺本部長のインタビューである。

ホンダ ブランド・コミュニケーション本部長、渡辺康治さん
ホンダ ブランド・コミュニケーション本部長、渡辺康治さん

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):10月2日に八郷社長が記者会見されて、その後に、今度は渡辺さんが2度目の記者会見を開かれました。追加で渡辺さんが会見された理由を教えてください。

渡辺康治ホンダ ブランド・コミュニケーション本部長(以下、渡):八郷の記者会見は急だったものですから、時間的な制約がありました。2回目は時間をかけて丁寧に補足をするという意味で私が行いました。

F:どうして社長ではなく渡辺さんが対応されたのでしょう? 社長の会見の時間が足りなかったというのであれば、改めて八郷さんが会見されるのが筋ではないですか?

:初回で八郷がお答えさせていただいたときは、企業メディアさんの方の質問が多く、主にカーボンニュートラルという新しいチャレンジに対して、ホンダがどのように立ち向かっていくかというお話を中心にさせていただきました。そのため、自動車専門誌やモータースポーツ誌に対してのお答え、特にF1に特化したお話の時間を十分に取ることができませんでした。
 そこで改めてモータースポーツとF1の話を中心に、私が対応させていただきました。

F:初回の記者会見の際も、渡辺さんは壇上にいらっしゃいましたね。

:ええ。あのときもモータースポーツやレース系の専門的な質問が来たら、私が答えようと思って準備しておりました。しかしあまりそちらの質問は出ませんでした。

F:ホンダF1撤退のニュースが世界を駆け巡った後、F1マネージングディレクターの山本(雅史)さんや、PU(パワーユニット)担当の田辺(豊治)さんは積極的……とは言わないまでも、複数のメディアに出て質問に答えていらっしゃいます。

:そうですね。

F:社長も記者会見を開いて話をした。それ以降、渡辺さんも、山本さんも、田辺さんもインタビューに応えている。

:はい。

F:モータースポーツ部長の清水宏さん(2019年4月就任)が出てこないのはなぜですか。記者会見にも登壇されませんでしたよね。

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