全6801文字

 こんにちは、AD高橋です。

 今回からスタートしたSWIFTのチーフエンジニア、小堀昌雄さんへのインタビューは、本編にも書かれているようにオンラインでのインタビューとなりました。実は当初、我々が浜松にお邪魔する予定だったのですが、たしか東京に「感染拡大警報」(いろいろな言い方があったので、正式名称は忘れました……)が出たため、「用心して我々がお邪魔するのはやめておきましょう」となりました。

 普段ですといろいろな角度からエンジニアの写真を撮っていますが、そんなわけで今回はキャプチャになってしまうこと、ご了承ください。

HEARTECTが初採用されたモデルは?

 さて、HEARTECTを採用したSWIFTですが、先週の試乗編でもお伝えした通りとても素晴らしい乗り味です。

 ここでクイズを。スズキのHEARTECTが初採用されたモデルは次のうちどれでしょう?

 1:ハスラー
 2:アルト
 3:ジムニー

 クルマ好きの皆さんには簡単なクイズでしたね。正解は2のアルトです。

現行型アルト(写真:スズキ、以下同)

 新プラットフォーム(この時点ではまだHEARTECTという名前は付けられていませんでした)を採用した現行型アルトは、2014年12月にデビュー。先代の燃費追求グレードであるアルトエコより60kgも軽量化。最軽量グレードであるFの5MTの車両重量はなんと610kgしかありません。さらに曲げ剛性、ねじり剛性は約30%向上したというアナウンスに度肝を抜かれました。

 アルトという軽自動車の中でも無駄がないコンパクトモデルで、どこに60kgもそぎ落とす余裕があったのか。もちろんハイテン材や樹脂の使用などもあるでしょうが、実はプラットフォームの骨格を滑らかな構造にすることで補強部品を減らしても十分な剛性を得られるように工夫して軽量化を実現したのです。これにより板厚もかなり薄くすることができ、さらに骨格を前方から後方まで途切れなくつながった形状にしたことで、部品点数を減らすことができたそうです。

 上の写真はHEARTECTのイラスト。比較できるようHEARTECT以前のプラットフォームの画像も掲載しようと思いましたが残念ながら見つからず……。しかしこの画像だけを見ても、滑らかな形であることは一目瞭然です。

 HEARTECTには、その前身となるプラットフォームが存在します。それが2012年にデビューした5代目ワゴンRのプラットフォームです。この世代で一新されたプラットフォームなどにより、ワゴンRは最大70kgの軽量化を実現。さらにホイールベースが延長されたことで、室内長や前後乗員間距離が長くなり、快適性が高められました。

5代目ワゴンR

 軽自動車の乗り味のレベルは5代目ワゴンR(と、その前年12月に登場したホンダの初代N-BOX)により飛躍的に向上。ワゴンR以前と以降でまったく別の乗り物になったと言っても過言ではないほどです。慌てたダイハツは2012年、ムーヴのマイナーチェンジでプラットフォームなどを補強して乗り味を向上させるものの、正直ワゴンRにはかないませんでした。

 実は本企画でダイハツ ロッキーを取材した際に、この時のことをさりげなく聞いてみました。ダイハツの開発陣はとても悔しい思いをしたそうですが、プラットフォームは一朝一夕で開発できるものではありません。さらに10年先、20年先を見据え、新しいプラットフォームでどのような展開をするかを計画する必要もあります。ダイハツ開発陣はぐっと耐えて今あるプラットフォームに改良を加えて乗り心地を向上させ、満を持して現行型タントから新プラットフォーム“DNGA”を採用したのです。

 トヨタのTNGA、スバルのSGP、フォルクスワーゲンのMQBやMEB、ボルボのSPAやCMAなど、各社は次々と新しいプラットフォームを採用。そこにはCASEへの対応という側面があります。

 自動化が進んだとき、ステアリングが切れているのにワンテンポ遅れて反応したり車線の中でふらついたりするようなクルマだったら、とてもじゃないけれど運転を任せることはできません。電動化により大容量バッテリーを搭載したときも重量増をしっかり受け止め、万が一の衝突事故の際もバッテリーを衝撃から守り火災などの事故を防げる骨格が必要です。そんな高性能プラットフォームの恩恵を多くの人に味わってほしいですね。

■変更履歴
記事掲載当初、本文中で「接地」としていましたが、正しくは「設置」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2020/09/23 10:05]