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:やっぱりお客様の視点で、「EVがほしい」となる条件を、自動車を造る側が提示できた時点だと思います。

F:具体的にはどのようなことでしょう。

:いろいろあります。非接触充電に、今よりもはるかに短い時間で済む急速充電。小型で大容量のバッテリー。要件は一つではありません。そういうものが全てそろってくれば、それこそイッキに時代は変わると思います。そう、流れはイッキに変わるんです。ある分岐点を越えたら、次は全員EVを買うような時代になる。今までEVを否定したり拒否したりしていたような人も、EVを買った方が便利でお得となれば、それは買いますよね。

F:それには税制の優遇も必要ですね。

:もちろん初期段階ではそれも必要です。でもメーカーがそこに依存しちゃってはダメですよね。補助金は長く続かないので。

F:中国が典型ですね。補助金が細ったら、早くも雲行きが怪しい感じです。

:そうでしょう。そうなるんですよ。

 改めて言いたいのは、ホンダはEVを否定するわけでも何でもなく、「必ず来る」と思っているということです。EVという商品を造るだけではなく、包括的にいろいろ見ながら、タイミングを見計らっているところです。「出しゃいいってものじゃない」とはそういう意味です。

エンジンの終焉、寂しくないですか?

F:三部さんは入社まもなくからエンジン開発に携わり、ゆくゆくはF1のエンジン開発まで夢見ていたと伺いました。そんな三部さんからすると、クルマが電動化していくというのは心情的にどうですか。EVの開発というのは、ある意味エンジンの全否定じゃないですか。本田技術研究所の社長というお立場上、EVなんかクソクラエとは言えないでしょうが、一抹の寂しさを感じることはありませんか?

:EVに関しては、ここ何年もずっと議論して来ているので、そういう感情はもうなくなりましたね。特にウチがディーゼルをやめた時点から顕著になくなりました。
 むしろ「内燃機関はいつまで持つんだ」という議論をここ何年もやっているくらいです。

 ヨーロッパでは2020~40年に内燃機関禁止、なんて話もあります。アメリカのカリフォルニア州なんてもっとすごい。2030年に内燃機関禁止という提案が出ています。いずれもあくまで現時点での情報ですが。

F:アメリカはF-150とテスラという両極端なクルマがともにバカ売れするという不思議の国ですからね(笑)。昨年サンディエゴに行ったときには笑いました。本当に巨大なピックアップとテスラばかりが走っている。トランプ政権ではあまり進まなかったEV化が、次の選挙でもし民主党が政権を取れば、大きく加速する可能性がありますね。

:政治に関してはうかつなことは言えませんが、政権によってはEV化が大きく加速する可能性があります。そのときに出遅れないよう、我々も準備しておかなきゃいけないわけで。

F:北米市場に関しては、GM(ゼネラル・モーターズ)とEVの共同開発に関する提携をされましたね。