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 EV(電気自動車)時代の到来を告げる声がかまびすしい。
 欧州各社は完全なるEVシフトを敷き、そのロードマップを見るとEV(と少しのFCV=燃料電池車)で埋め尽くされている。
 そんななか、三部社長の「(EVは)出しゃいいってものじゃない」なる爆弾発言である。
 今回は前回の発言の真意の部分から始めよう。

本田技術研究所社長、ホンダ専務の三部敏宏さん

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):EVは「出しゃいいってものじゃない」という、非常にインパクトのあるコメントについて、もう少し詳しく教えてください。要するに、焦って完成度の低い、ショボいEVを出して恥をかくより、じっくり練り込み造り込んだEVを出した方がいいよ、ということですか?

三部敏宏さん(以下、三):いえ。今だってそれなりのEVは出せますよ。出せますけれども、利益の問題やインフラの問題があるじゃないですか。

F:充電ステーションは多いようでまだまだ少ないし、自宅に充電設備を設置できる家庭は限られている、と。

:そう。充電一つ取ったって、お客様のためにはまだなかなかならないですよね。今のクルマの置き換え、というのは現状ではまだ難しい。

F:そりゃそうです。何しろ100年以上ガソリンでやってきているのですから。

:それからCO2排出の問題もある。トータルでCO2を下げることを考えると、今の段階ではハイブリッド車(HV)に乗り換えた方が、よっぽどCO2が減る。

F:HVはCO2削減に効きますか?

:効きますね。EVがうんとたくさん売れるようになれば、また話も違ってきますが、今の段階ではそう多く売れるものではありません。もちろん我々もEVの研究開発は進めていますよ。そこは怠りなくやっていますが、やはり市場に出すにはタイミングというものがある。

F:なるほど。出すからにはしっかりと利益も確保しなければならないと。

「その時期」とはいつなのか

:利益だけでなく生産のことも考えなくてはいけません。EVを造って売ることになりました。じゃあ、ホンダはEVをどういうふうに生産していけばいいのかと。我々は自動車会社として、生産領域までしっかり考えなければいけません。EV専用工場がいいのか、あるいは今の工場で既存車種と混流して造るのがいいのか。その判断も重要です。

F:これから出るHonda eはどうしているのですか?(インタビュー後、2020年10月30日発売が決定)

:今は混流(生産を)しています。まだ出る数が少ないので。でもいずれは必ず増えてくる。そのときにEVの専用工場はどうあるべきか。そういうことも今のうちからちゃんと検証して、来るべき時に備えなければなりません。さっき言った「出しゃいいってものじゃない」というのはそういう意味です。我々は無論何もしてないわけじゃない。見えないところでいろいろやっています。ですが今はまだ“その時期”ではないのかな、というところですね。

F:三部さんのおっしゃる「その時期」とはいつのことですか。何がどのように整ったら、“その時期”と言えるのですか?