フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):先程伺った、ホンダ社内における二輪と四輪の技術交流の件。考えてみればホンダの二輪開発はカワサキやヤマハに比べると圧倒的に有利ですよね。四輪で長年蓄積してきた知見をたっぷり投入できるのですから。

三部敏宏さん(以下、三):ええ。他社と比べると非常に有利だと思います。四輪も二輪の、たとえばエンジン開発の技術を取り入れていますし、さらに技術交流は二輪と四輪だけでなく、F1のPU(Power Unit)に航空機のテクノロジーを注入したりもしています。

本田技術研究所社長、ホンダ専務の三部敏宏さん
本田技術研究所社長、ホンダ専務の三部敏宏さん

F:や、それもありました。あの長いシャフトを3点で支持するというやつ。それで一気に信頼性が向上して壊れなくなりました。

:MGU-H(Motor Generator Unit - Heat)という熱エネルギー回生システムの部分ですね。航空機のエンジンはものすごい回転数で、技術的にF1のターボと近い部分があるんです。航空機エンジンの連中から言わせれば、「簡単だよ、こんなの」という話です(笑)。実際にあれは、試作の一発目でできちゃいましたから。

F:なんと! 試作一発で!

:何というか、クルマとは文化が違うんですね。そもそも航空機エンジンの連中には、「トライ&エラー」という発想がない。

F:確かに。自動車エンジンのエラーは「このポンコツめ!」と蹴飛ばせ済む話ですが、飛行機のエラーはヘタすると墜落につながります。

:そう。飛行機って何回も何回も造って直して、造って直してとやるものじゃない。だからシミュレーションの技術が自動車よりもうんと進んでいるんです。MGU-Hに関しては、実は相当早い段階から高いレベルに達していた。こんな芸当は、ほかの自動車会社じゃまったくできないことです。

F:クルマにバイクに航空機。さらには発電機や芝刈り機まで造っている会社の強みですね。

 とはいえ、その発電機の部門、ライフクリエーションは残念ながら赤字です。

またも会議室に響く「ダァーッ!!」

:いやいや大丈夫です。あそこは航空機を入れているので。それを除けば黒字です。航空機はどうしても収益化するまでに時間がかかるので。

F:や、なるほど。航空機はライフクリエーションに計上されているのですね。前年(2020年3月期)の決算を見ると、金融部門がものすごくいい。二輪が利益率13%くらいで、四輪はギリ黒字というところでしょうか。

:金融は構造的にもともと利益率が高いんです。そして「金融」と言っても、そもそもが自動車ローンとか自動車リースとか、「四輪にまつわる金融事業」ですからね。ウチはそれを四輪事業と分けていますが、一緒にした数字を発表している会社もある。あれを一緒にすれば、そりゃ数字はよくなります(笑)。

F:えー! そんなことが! 知りませんでした。で、どこですか。一緒に出している会社というのは?

:例えば○○さんとか……。

ホンダ広報アントニオ梅田:ダーッ!! ダメです。三部さん、三部さん! お願いしますホント……。

F:いいねぇこのやりとり。マツダの藤原大明神と、広報のカット町田氏の掛け合いを見るみたい(笑)。

アントニオ梅田:……どうしてこんなことに……私は本来こんなキャラじゃないんですよ……。

 ここで少し数字の話(2019年度決算、20年3月期)をさせていただくと、売り上げの7割くらいが四輪で、利益の半分くらいが二輪ということになります。四輪は部品の共通化などで効率化を図り、利益率を改善すべく工夫をしています。

F:先進パワーユニット・エネルギー研究所で、次世代の様々な研究をしておられると伺いましたが、燃料電池はどうなりましたか? トヨタのMIRAIは二世代目を発表しましたが、一方でホンダのクラリティ FUEL CELLは4年前に法人向けのリース専用で出したきりそのまま、という印象です。今年6月に、ようやく個人向けリースも始めたのがトピックくらいで。

:燃料電池は将来技術として1つの柱になるであろうと考えています。

F:現行クラリティで打ち止め、ということはないですか?

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