:出している商品の技術レベルは非常に高く、間違いなくいい商品を出している、という自負はあります。ですが、ホンダに求められているのはそれだけではない。やっぱり普通のクルマを出しているだけでは納得していただけない。

F:そこですよ。ホンダは「普通にいい」だけじゃダメ。ホンダは普通じゃ許されない。

:そうそう。ウチが普通じゃダメなんだと。

F:早い話が、S2000みたいなクルマを出してくれと。あれを出したら、黙って納得する人は大勢いる。

今、S2000を出すのが「ホンダらしさ」か?

:みなさんからそう言われていることは、ホンダにとって喜ばしいことだと捉えています。そして、そうした声に今はお応えできていないな、という思いもあります。ありますけれども、じゃあこれからS2000みたいなスポーツカーを造るのかと言うと、それは違うだろうと。

F:そうですか。違いますか。

:違う。だってS2000は20年も前のクルマですよ(1999年4月発売)。いまさらS2000なんて言ったって、そんな過去の栄光に縋るのかって話ですよ。そんな考えじゃ未来はない。過去のホンダの価値観に戻ることが我々の未来では絶対にないと思います。

F:うーむ……。

:フェルさんが言わんとすることは分かりますよ。今ホンダにあるスポーツカーと言ったって、S660は軽自動車だし、NSXは高くて買えないし、と。だからS2000を造れと。そういう声はいろいろなところから聞くんですけれども。

F:実際にどんな人が言ってくるのですか?

:高齢層ですね。

F:爺さんか……。

:それはつまり、過去のホンダの栄光を知っている人たちです。

F:実際に現代版S2000を出したところで、買ってくれるかどうかも分かりませんからね。声高に文句を言う人は、たいてい買わない。

:そんな背景があるので、これから出すHonda eは、我々の一つの回答ではあるんです。EVとしてはかなりの後出しジャンケンのクルマなので、インパクトのあるEVを出したいという思いもあった。だからドアミラーも取っちゃったし、今の段階でできる限りの様々な要素を詰め込んでいます。デザインも過去のホンダ車の延長線上にない、まったく新しいものです。

F:先日○○○でナンバーが付く前の実車を偶然見かけました。写真を撮ろうとしたら、4人がかりくらいで止められましたけど(笑)。するとHonda eが、これからのホンダ車の指針になるということですか?

:いや。そうではありません。これから全部あのテイストでいくかというと、そこはまた違う。

F:「最近のホンダは元気がない」と言われていて、それじゃホンダの元気をお見せしましょうと言うときに、S2000的なものは過去の栄光に縋るみたいだからイヤだと。Honda eテイストがこれからの方向性かというとそれも違うと。それではこれからの「ホンダの元気」を、どうやって世の中に示していかれるのですか? 何か言葉にすることはできませんか。

:これが難しい。本当はいろいろ言いたいことはいっぱいあるのですが……。

F:どうぞおっしゃってください。何が三部さんをストップさせているのですか。広報さんどうですか?

ホンダ広報アントニオ梅田:……そこはまだちょっとアレでですね……。

:今はちょっとお話しする時期じゃないというかですね……。

F:時期の問題ですか? 本当は何もない、とかじゃなく?

:いやいや。ちゃんとありますよ。時期の問題です。

F:いつになったら伺えるのでしょう? どんなタイミングですか?

:それも含めてちょっと。今は本当に微妙なところだから(笑)。

アントニオ梅田:乞うご期待、ということで(笑)。

F:はぁ……。

 時期とはいつのことだろう。何をどのように期待したらいいのだろう。
 奥歯に鶏のササミが挟まり、前歯に青海苔が付き、犬歯の隙間に黒胡麻が詰まってしまったような、この何とも言えないモゴモゴ感はどうしたことか。
 本インタビューで最もビミョー空気が流れた瞬間である。

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