昨年9月。本田技術研究所の二輪車研究開発部門が親会社である本田技研工業に統合された。そして今年の4月には、四輪の研究開発部門もガサッと統合された。
 正しく令和の民族の大移動。この大いなる決断は、果たして吉と出るか、はたまた凶と出るのか。

 本田技術研究所社長にして、ホンダ専務の三部敏宏さんインタビュー、前回からの続きである。

本田技術研究所社長、ホンダ専務の三部敏宏さん
本田技術研究所社長、ホンダ専務の三部敏宏さん

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):技術研究所から本体に移ったエンジニアの人数は、あまりにもセンシティブであるため具体的な数字を伺うことができませんでした。それにしても、まだ研究所の方には何千人単位でエンジニアが残っている。

三部敏宏さん(以下、三):そう。本当に新しいモノを作る、新しい価値を創造するための人員は、研究所の方に豊富に残してある。しかも研究所は、いま上流の研究開発を徹底して強化しています。

 具体的な商品開発をしない研究組織で、これだけの規模感を持ってやっているところなど、世界中探したって見つからない。世界でウチだけです。そしてその内容は、たぶん間違いなく世界トップレベルだと自負しています。新しくスリムに生まれ変わった研究所は、新しい価値を創造するという目的に向かってまい進する。一方(二輪四輪の)ものづくりセンターは、本体と一緒にすることによってより効率を上げていく。こちらは事業としてうまく回る役割を持っています。研究開発をする環境としては、昔の形に戻ったと言っていいのかもしれません。非常にいい環境になったと思います。

F:研究所の方に残った人は、より上流の、商品からはさらにかけ離れた研究に集中するようになったと。それこそ本体から「ムダ遣いしやがって……」と文句を言われたりしませんか。人間の心理とか、脳の研究とか、クルマにもバイクにも直接は結びつきませんよね。また収益化するにしても、その貢献度を効果測定するのが非常に難しい。

:そこは八郷(八郷隆弘、ホンダ社長)と約束してあるので大丈夫です(笑)。

F:なるほど。それじゃこれからは、本体からムダ遣いだなんだと文句を言われても、うるせえガタガタ抜かすなと言い返せるわけですね(笑)。

:今は言えます。今は言えますが、もちろん社長が裏切ったらどうなるか分からない(笑)。

ホンダ広報アントニオ梅田:ダーッ!

:今のところは潤沢な研究開発のリソースが保証されています。一時期、研究所を分解してホンダの行く先がどうのこうの……なんてネガティブな記事が流れたりしたのですが、そんなはずがないじゃんと。

F:そんな記事が出ていたんですか? 知りませんでした。

:新しい研究所は、先進技術研究所と先進パワーユニット・エネルギー研究所、デザインセンターなどに分かれています。先進パワーユニット・エネルギー研究所というのは、まさに我々の得意技、得意分野であるエンジンを突き詰めていく部署です。ただ、その行く先は、もしかしたら内燃機関じゃないかもしれません。電動化技術もそうですし、航空機のジェットエンジンもそう。それから燃料電池技術、ガスタービンもやっていく。

F:なるほど。幅広いですね。

:思いきり幅広いです。「パワーを生み出すユニット」というくくりで、研究所を全部くくったので。研究所は世界トップレベルのエンジニアを大勢抱えています。だからいろいろな形で世界をリードしていくことができる。

 研究開発を急がせるという意味もあって、先進、最先端だけを突き詰める研究所に分けたのです。周りにアレコレうるさい外野がいると、スピード感がなくなっちゃう。これから面白い結果がいろいろ出てくると思います。

最近のホンダは元気がない

F:なるほど。研究所のあり方について、とてもよく分かりました。ありがとうございます。

 せっかく前向きな話をいただいたところですが、嫌な質問をもう一つ。これはちょっと漠然とした話なのですが、「最近のホンダは元気がない」とよく言われます。これについてはどう思われますか?

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