F:他の自動車会社で、ホンダのように事業と研究開発を別会社にした会社はありますか?

:ないと思います。ウチだけでしょう。分けたからこそ、事業に左右されないで面白い技術がたくさん生まれたのは事実です。でもそれらがすべて事業につながったかというと、それはノーなんです。

F:面白い技術、先進的な技術だけれども、もうからない、と。

:もうかった技術もありますよ。もちろんもうかった技術もたくさんあるのだけれど、もうからなかった技術もたくさんあるわけで。やっぱり分けているのには一長一短があって、事業側の観点からすれば、「ムダ遣いばかりしやがって……」ということになるわけです。

「それ売れるの?」思考に邪魔されないために

 「ムダ遣いばかりしやがって……」。
 断っておくが、三部さんは本田技術研究所の社長であり、ホンダ本体の専務である。
 このお立場だからこそ言えるセリフである。

F:それにしても技術研究所とホンダ本体を統合するというのは大変なご決断だったと思います。スピードアップというメリットは理解できましたが、では一緒にすることにより生まれると予想されていたデメリットは何ですか? 開発の独自性が侵害されるという恐れはありませんか?

:やっぱり初期段階から「事業性」という物差しが入ると、新しい独創的な技術が生まれなくなるんじゃないか、という恐れはありましたよね。

F:営業サイドから、「そんなの売れるの? ホントにもうかるの?」と言われてしまうと答えに窮してしまいますよね。

:そうそう。新しい技術って、最初から利益を出そうと思っても、そう簡単にはいきませんから。すると新しい技術が生まれにくくなってしまう。だから上流の技術は今でも研究所に残してあるんです。

F:例えばFITの「心地よさ」というキーワードを導き出した「ヒトケン」なんかはどうでしょう?

:ヒトケンでやっていた研究は本田技術研究所の中に残しています。人研究の他にも、面白い研究をたくさんやっています。相当アカデミックな領域にまで踏み込んだ、脳研究みたいなこともやっています。

 ホンダ本体に統合といったって、そういう面白いところは全部残してありますからね。だからホンダ全体からそういう面白い、先進的な、チャレンジングな部分が枯渇してしまうようなことは絶対にないですよ。

F:いいですね。それを心配していたんです。それを聞いて安心しました。

:もう聞かれる前にしゃべっちゃうけれど、研究所に残した人数だって相当な数がいてですね……。

ホンダ広報梅田さん:ダーッ!!!!

:これは言っちゃダメなのか(笑)。

ホンダ広報梅田さん:ダー! ダー!(日本語訳:ダメです。本当にダメです。研究所の人数は公表してはいけません)。

:言っちゃダメなの? あ、そう(笑)。まあ研究所からこっちには○○人ほど来ているんだけども……。

ホンダ広報梅田さん:ダァァァァ……!(半泣き)。

 マツダ広報のカット町田氏に続き、広報の新キャラ登場。その名もアントニオ梅田(笑)。いやあ、ホンダって本当に面白い会社ですね(水野晴郎調)。

 と、そろそろ会社に行く時間です。ウチはお盆期間も営業していますからね。
 サラリーマンは辛いです。それではみなさまごきげんよう。

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