:今までだとこのBカテゴリーのベンチマークって、フォルクスワーゲンのポロだったんですよ。もう圧倒的、絶対的なベンチマークです。だから3代目までは思い切りポロを見ていました。ポロみたいになりたいな、と(笑)。ただ我々が今回目指した「心地よさ」という観点からすると、絶対王者のポロも完璧ではないんです。低速領域では硬いし、ツインクラッチを使っているから変速もギクシャクする。

F:首都高の継ぎ目とか、結構ガタンときますしね。

:そうそう。「心地よさ」で参考になるとしたら、これはフランス車だろうと。そこでシトロエンのC3を参考にしたんですね。

F:C3は心地いいですか?

:いいですね。ロールもするし、ハンドリングもそれほどビシビシ来るわけじゃないですが、雰囲気も含めた心地よさは抜群ですね。

 ※不肖フェルが試乗編で「ドイツ車からフランス車になったようだ」と評したのは間違いではなかったのだ。どうです。私もタマにはいいことを言うでしょう!

:たぶんどこのメーカーさんも、ドイツ車を見ていると思います。間違いなく完成度が高いですし。今のポロもすごくいいと思います。しかし、僕らが目指すのとはちょっと違う。

RSは造らないのですか?

F:そんなFITですが、RSは造らないのですか? それこそ真逆の方向になってしまいますが。試乗させてもらって、このしっとり感はいいのだけれど、やっぱりRSも欲しいなと思いました。

:うーんとですね……。

F:やらない?

:正直そういう声は毎日たくさんいただいています。でも僕はやりたくない。

F:えー!

:同じスポーツだったら、まったく違う提案をしたいと思っています 。実は今いろいろと構想しているところなのですが、RSのようなスポーツバージョンは、みんなモータースポーツから来ていますよね。乗る人は当然マニュアル操作ができて運転もうまい。でもそれではあまりにも間口が狭すぎる。確かにコアなファンには突き刺さるけれども、それ以外の多くの方には興味を持っていただけない。

F:それはありますよね。

:みんなにもっと広く「クルマを運転するって楽しいよ!」と伝えられるようなクルマ。そっち方向のスポーツだったら僕はアリだと思うんですよ。

F:それはRSではなく。

:ではなく。日常で使うFITというクルマにおいてのスポーツは、もっと間口の広いものだと思っています。クルマにそれほど興味がないような人でも、「お、いいな」と思って乗ってもらえるようなクルマ。そして運転するのってこんなに楽しいんだと思ってもらえるようなクルマ。それをいま構想中です。

F:スミマセン。イメージがまったく湧きません。つまりはどんなクルマですか?

:ウチの商品開発に関わることなので、具体的に言うとネタバレになっちゃうので(苦笑)。

F:ヒントだけでもいただけませんか? お願いします。

:ヒントで言うと、やっぱりモーターを使ったユニット。ここが大きなヒントですね。いずれにしてもクルマを運転するのは楽しいね、という思いを広めたいですよね。

F:いずれにしてもガチガチのクルマではないと。

:僕が僕個人のニーズを満たすんだったら、おっしゃる通りガチガチでやりますよ。そりゃそうですよ。早い話、タイプRみたいなのを造ります。FITをベースに、ブレンボのブレーキを入れて、17インチの扁平タイヤを履かせて、足を固めて、エンジンもガンガン回るようにして、と。でも僕はプロですよ。自分のニーズを満たすんじゃなくて、お客様のニーズを満たさなきゃいけません。個人が欲しいものを独りよがりで造るのは、プロじゃなくたってできるじゃないですか。

 僕はターゲットユーザーのニーズを満たすクルマを造りたいんですよ。だから先ほど言ったようなクルマは、僕は満たされても僕のお客様は満たされていないのでダメなんです。絶対にダメ。あり得ないです。

F:私がホンダのLPLだったら、カリカリのクルマをブチ上げて、ハデにプロモーションするんだけどなぁ。

マイトのY:そんな個人的な欲求だけで生きている人はLPLなんかに一生なれないんですよ!

:商品は誰のニーズに応えるかが大切です。僕のターゲットユーザーは明確に描けているので、その人を満たさないと本当に意味がないんですよね。クルマ造りってそういうものなんですよね。

 4回にわたってお届けした、FIT開発者インタビュー。
 お楽しみいただけましたでしょうか。

 次回はホンダの専務取締役で、本田技術研究所代表取締役社長である三部敏宏さんの登場です。
 この方がまた藤原大明神ばりにハジけたお方なのですよ。
 切り込みまくりの質問に、ハジけまくり回答の応酬です。ご期待ください!