F:あれはすごくいいです。センタータンクがもたらす最大の恩恵です。本当に便利だと思います。さらに「Tall mode(トールモード)」にすれば、ハードケースに入れた自転車をそのまま立てて入れられる。そんなBセグなんて、FITしかありませんもの。あれは本当にいい。

こちらは「Tall mode(トールモード)」。センタータンク採用による低床化を高さ方向に生かしたシートアレンジ。
こちらは「Tall mode(トールモード)」。センタータンク採用による低床化を高さ方向に生かしたシートアレンジ。

:そうなんです。FITはシートアレンジが多彩で、「こう使えばベビーカーをそのまま入れられる」とか、北の方へ行くと、「スタッドレスを4本ゴロンと入れられて便利だよ」とか、お客様から逆にいろいろな使い方を教えていただいたりしました。あのシートは本当にお客様からも支持されていました。でもですね……今だから言えることなんですが、燃費ラベルを取りにいったグレードは、そのシートを採用していなかったんです。

F:え? え?

:前のFITには、ダイブダウンできるシートを載せていないグレードがあったんです。軽くするために。燃費をよくするために。

F:……燃費スペシャルでそこまでやったということですか。あのシートはそんなに重いということですか。

:はい。あのシートはかなり重いです。だから載せられなかった。燃費のために、僕らはFITのウリである、お客様からも支持されているあのシートを載せなかったんです。もうなりふり構わずに。先代の開発では、そんなことをやみくもにやっていたんです。

ダイブダウンできるシートを省き、ボンネットはアルミ製

F:知りませんでした。FITであればすべてのグレードでリアシートが畳めるものだと思っていました。それはお客にダマでやっていたんですか。

:さすがにダマというわけにはいかないので、もちろんちゃんとお伝えしていました。でもまあ何というのかな……積極的に宣伝したわけでもなかったんです。

F:うーむ。実際に重量はどれくらいあるのですか?

:4kgくらい余計に重くなります。

F:4kg。なるほど。

:さらに言うと、ボンネットをアルミにしたりもしました。そのグレードだけ。

F:それは本当にいい話じゃないですか。健全な軽量化です(笑)。

:健全なんですが、アルミボンネットはものすごく高いんですよ。だから他のグレードには展開しないで、燃費ラベルのクルマにだけ付けていたんです。大人げない話なんですよ、今にして思うと。

F:大人げないって言うよりも、節操がないなぁ……。

マイトのY:あぁ! コラ! スミマセン田中さん(汗)。

:いや、そう言われても仕方がないです。本当にあのころの僕らは節操がなかったんです。なりふり構わずに、お客様のバリューじゃないところをガンガンやっちゃったんです。そしてその張本人が僕なんです。

F:FITのLPL、6年ぶりの懺悔、ということですね。

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