コロナで痛めつけられているところに外部からのサイバー攻撃。
その影響で、国内外11工場で生産を一時停止するなど、まさしく「泣きっ面にハチ」状態の6月某日。インタビューは実施された。お話を伺うのは、本田技研工業 四輪事業本部 ものづくりセンター 完成車開発統括部 車両企画管理部 LPLの田中健樹さんである。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):初めまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。今日はコロナとかサイバー攻撃とかで大変なところ、お時間をいただきありがとうございます。
担当編集者・マイトのY:(小声で)サイバー攻撃は言わんでええがな……。
田中健樹さん(以下、田):……たはは……。いや、今日はフェルさんにお目にかかれることを楽しみにしてきたんですよ。マスクの中はいったいどんな顔なのだろうって(笑)。
F:こんなマズい顔でスミマセン。それでは早速お話を伺います。6年5カ月ぶりのフルモデルチェンジとなったFITですが、外見もさることながら、乗り心地に関しても大きく味付けを変えてきましたよね。今までの延長線上にはないような。これにはどんな狙いがあるのですか?
田:実は私、先代のFITも担当していたんですよ。今はLPLという立場ですが、前はそれの1個下みたいな感じ。LPL代行という立場で開発に当たっていたんです。
F:へえ。
田:だから新旧両方のことがよく分かります。先代の開発をやっていたときは、ともかく「数字」にこだわっていたんですよ。先代は数字にこだわり抜いた。
先代の開発は「燃費世界一のためならなんでもありだ!」
F:数字。有り体に言えば燃費ということですか?
田:そう。燃費。端的な話が燃費です。先代のFITは、ともかく燃費世界一を取ろうという目標を掲げていました。FITが属するBカテゴリーは、ワールドワイドで売れる非常に重要なカテゴリーです。ここを制すれば世界を制することができる。トヨタさんだとアクアとか、フォルクスワーゲンさんならポロとか。そんなクルマが属するカテゴリーです。
F:Bセグで燃費というと、どうしてもアクアのイメージが強いのですが、先代FITは世界一を取った期間があるのですか?
田:はい。ワンモーターのハイブリッドで一瞬だけ取りました。でもそのクルマは、本当に世界一を狙うため“だけ”に造ったクルマだったんです。ウチの会社はご存じの通り、なんでもトップが好きな会社です。だから1番を取ろう、1番こそ価値があるんだと。当時は私も実際にそう思っていて、心底そう思っていて、だから燃費トップを取るつもりで頑張っていたんです。
F:なんでもトップを取る。1番こそ意味がある。結構なことじゃないですか。蓮舫さんに聞かせたいわ(笑)。
田:でもそれは、「他のことを削ってでも(燃費の)トップを取りにいこう」という特別な開発になったんです。
F:軽量化を図るということですよね。それも結構な話じゃないですか。
田:そうです、軽量化。例えばFITの特徴である「ダイブダウン」というリアシートの畳み方(リアシートの座面が、床に潜り込むように収納される。初代FITのホンダのリリースを参照、こちら)。

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