しっとりフィットな4代目

 スタートボタンを押してエンジンを始動させる。クルマを走らせる。
 街中を走った印象はともかく「しっとりしなやか」の一言である。

 4代目になり、FITは路線を大きく変更した。分かりやすく言うと、ドイツ車からフランス車に生まれ変わったような感覚だ。ホンダの中でいったい何が起きたのか。今までのホンダ車からは、とても考えられない乗り心地だ。率直に「ホンダのテスト陣をよく説得できたなぁ」と思う。

 フザケンナと怒る人もいたのではないか。

 今回のe:HEVは、エンジンで発電し、その電力でモーターを回して走る「シリーズハイブリッド」の状態が「基本」である。基本の間の走行感覚は純粋なEVである。

 走行時のパワーユニットからの力の掛かり方は、日産のNOTE e-POWERに近い(ただ“EV感覚”は、圧倒的にNOTEのほうが強い)。

 FIT e:HEV とNOTE e-POWERの決定的な差は、イザという時にエンジンの軸がタイヤにつながるか否かにある。NOTEはエンジンとタイヤが軸でつながっていない。完全なるシリーズハイブリッド車。FITは高速走行時に軸がつながるようになっている。いいとこ取りをしているのだ。この差は非常に大きくて、実に気持ちよくクルージングできる。一方で多少の燃費を犠牲にしている。飽くなき燃費競争から離脱したわけではあるまいが、「燃費よりも気持ちよさ」「数字よりも感覚」を重視したことによるものだろう。この辺りは開発者インタビューで思い切り突っ込んで聞いてみよう。

FITのe:HEV。前モデルのFITハイブリッドはワンモーターのいうなれば簡易型。今回は2モーターでストロングになった。実はこの方式、ホンダとしては初めてではなく、アコードやオデッセイで既に採用されているi-MMDと同じ仕組みである(現在、i-MMD搭載車はすべてe:HEVに名称変更されている)。FITのような小型車に組み込まれたのが初めてなのである。
FITのe:HEV。前モデルのFITハイブリッドはワンモーターのいうなれば簡易型。今回は2モーターでストロングになった。実はこの方式、ホンダとしては初めてではなく、アコードやオデッセイで既に採用されているi-MMDと同じ仕組みである(現在、i-MMD搭載車はすべてe:HEVに名称変更されている)。FITのような小型車に組み込まれたのが初めてなのである。

 首都高に入った。段差のいなし、高速のロール。シートだけでなく、クルマのすべてが2段階ほどしっとり上質になっている。これはよろしやおまへんか。ただ、それと引き換えに失った部分もある。あのキュキュッとした鋭敏さ、俊敏さが多少失われてしまったのだ。

 FITの最大の美点であったクイックな動き、キュキュッとした感覚。あれがないのは寂しい。「しっとり」を取るか、「キュキュッ」を取るか。ホンダはしっとりを取ったという事なのだろう。本当のところはどうなのか。ここも開発者インタビューで聞いてみよう。

快適な高速走行。視界が良いって素晴らしい。
快適な高速走行。視界が良いって素晴らしい。

 1週間後。1.3リットルガソリンエンジン搭載の、NESSに乗り換えた。
 こちらは普通のエンジンに普通のCVT。

 先にe:HEVに乗ってしまったのがいけなかった。サスペンションの上質さは変わらないけれども、CVTがイカン。どうしてもCVT特有のラバーバンドフィールが気になってしまう。

 気になり出すともう止まらない。「しっとり」の足回りが、「もっさり」に思えてきてしまう。

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