噂通りの視界良好

 激戦区であるBセグメントのカテゴリーにホンダが放った勝負車。
 当代取って4代目のFITである。

 FITはもともと昨年11月から発売される予定であったのだが、先に発売されていたN-WGNと同型の電動パーキングブレーキに不具合が見つかったため、今年の2月に発売が延期されるという不幸なツマズキがあった。ちなみにCMのナレーションは妻夫木聡である。

7年ぶりにフルモデルチェンジされたホンダのFIT。 BASIC、HOME、NESS、CROSSTAR、LUXEと、実に5つのタイプが用意されている。
7年ぶりにフルモデルチェンジされたホンダのFIT。 BASIC、HOME、NESS、CROSSTAR、LUXEと、実に5つのタイプが用意されている。

 気を取り直し、満を持しての2月14日。バレンタインデーに再設定された発売日は、しかし新型コロナの脅威がささやかれ始める時期と運悪く重なってしまった。

 なんとも幸先の悪いスタートではあったのだが、新しいFITは大変な意欲作である。

 何しろ5種類のタイプが用意されている。さらにそれぞれのタイプにハイブリッドと普通のガソリンエンジンの2種類のパワートレインが用意されている。都合10種類。さらにさらにそれぞれにFFと4WDがある。かくも多種類を用意したのは、もちろんFIT史上初のことである。

 今回はハイブリッド(今回のFITはフィット・ハイブリッドとは呼ばず、フィット e:HEVと呼ばせている)のLUXEという革シート仕様の最高級車と、1.3リットルガソリンエンジンNESSという廉価版の2種類。それぞれを1週間ずつ試乗した。

 まずはハイブリッド……もとい、e:HEVから。

よく似ていますが、奥はFITではありません。さて誰でしょう。
よく似ていますが、奥はFITではありません。さて誰でしょう。

 例によって高橋マンちゃん(早くバイクの免許を取ってください)からクルマを受け取る。

 お互いに忙しかったので、長く会話もせずに、「それじゃこれで」という程度の挨拶を交わして、ドアを開けクルマに乗り込んだ。

 まずシートの座り心地がいい。格段に向上した。
 何というか、2段階くらい上のクラスの座り心地である。端的に言うと、「カネがかかっている」印象である。

 北欧の家具のように、思い切りよくシンプルに仕上げられたインパネ回りもいい。

 それも相まって、前評判通りに視界は非常に広い。席に座り前を見ると、眼前がパンと開けたような印象だ。

Aピラーを運転席側に引き寄せて、実現したパノラマ視界。ご覧の通り思い切り視界が開けている。
Aピラーを運転席側に引き寄せて、実現したパノラマ視界。ご覧の通り思い切り視界が開けている。

 衝突時に大変な力が加わるAピラーは、その衝撃を受け持つために太く重い。太いから視界を遮ることになる。新しいFITの「パノラマ視界」の秘密は、衝突時の安全確保と車体の剛性維持のためには欠かせないけれど、視界的には邪魔で処理に困るAピラーを、思い切り運転席側に引き寄せたことにある。

 本来のAピラーの位置にある細い柱は、ガラスを支えるためだけの目的で設置された、いうなれば疑似Aピラーである。

うんと後方に追いやられたAピラー。前方にある細い柱はガラスを支えるため“だけ”の役割で、衝突時の衝撃吸収には関係がない。
うんと後方に追いやられたAピラー。前方にある細い柱はガラスを支えるため“だけ”の役割で、衝突時の衝撃吸収には関係がない。
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