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西:超乱暴な平均でいくと、4月に掲載された中古車の1台あたりの平均価格は148.8万円です。そして購買価格の平均が140万円です。

カーセンサー誌上から消えた100億円

F:なるほど。カーセンサーに載っているクルマの平均価格が148.8万円、そして実際にカーセンサーを通して売れたクルマの平均価格が140万円。載っているクルマが全て売れるわけではないから、そこに8万の差が出るわけですね。平均価格の推移はどうでしょう。ずっと低迷しているのですか?

西:いえ、基本的にはずっと右肩上がりです。例えば去年の4月なら143万円、一昨年だと137万円が平均価格です。ですが直近の2カ月は150.7万から148.8万円に下がってしまいました。これは恐らく新型コロナの影響だと思います。

F:まあ2万円程度なら誤差範囲ですよね。

西:とんでもない! 2万の下落はメチャ大きいです。なにせ50万台の平均なんですから。50万台のクルマが、一斉に2万円も値下がりするって、今までにないことです。総額ベースで見たら大変なことですよ。

F:そうか。総額で見ると、少なくともカーセンサーの誌上から100億円もの価値が蒸発したことになるんですものね……。コロナ恐ろしや。すると中古車販売の現場も相当な影響を受けているのでしょうね。しばらく掲載を見合わせたいとか、掲載料をマケてくれとか、そんな話も出てくるのではありませんか。

西:正直な話、受けています。ちょっと経営が苦しいから広告出稿を控えるわ、という会社さんもあれば、売り上げが減っちゃってヤバいから、逆にここでガンと出稿を増やさなきゃ、という会社さんが拮抗しているような状態です。カーセンサーが掲載料をマケるということは絶対にやりません。どこかの地域だけとか、どこか特別な会社さんだけとかをやると、本当に収拾が付かなくなってしまいますから。そこだけはもう僕ら絶対にやりません。これはカーセンサーだけではなく、全リクルートのメディアに共通していることだと思います。

F:なるほど。そりゃそうですよね。もともと横のつながりが強い業界だし。オークション会場の食堂で、「カーセンサーはゴネればマケてくれるぜ」なんて話が出たら、一瞬で広まっちゃう(笑)。

西:カーセンサーが販売店さんにできる支援策って、何も掲載料をマケるだけじゃないと思うんですよ。例えば実際にお店に見に行かなくても、少しでも買いやすくする仕組みを考えるとか。今360度ビューの商品を作っているのですが、これなんかすごいですよ。内外装をスマホの画面上でグルっと一回り見渡せるようにしているんです。昔だと写真が1枚1枚貼ってあって、「大変きれいな状態です」とかのキャプションが入っていただけじゃないですか。

F:あったあった。ボログルマでもできるだけ写真をキレイに撮ってね(笑)。

カーセンサーで物件を表示すると、検索画面に「360°画像付き車両」というチェックボックスが出てきます。

西:それをもっと分かりやすく、見やすくして、お店に行く前に、ある程度の意思決定を促して、可能な限り商談を決まりやすくするよう工夫をしているんです。直接金銭をマケるよりも、結果的にはそちらのほうが絶対にお店のためにもなるわけですし。

F:究極的には、お店に行かなくても、カーセンサーの画面だけで、その店のクルマを買えるようにするのがゴールなのですか。カーセンサー上で完結する、ECにしてしまうというのが最終目標ですか。

西:カーセンサーをECにしたいとは思いません。そこはよく議論になるのですが、僕らのサービスは、あくまでも商談というフェーズをどのようにしてお手伝いするかに止めています。みんながみんな、現物を見ないで買い物をするのがそんなに素敵でしょうか。僕らはそう思いません。取りあえず買っちゃったけど、その後はどうするのか。お店の人とその後の付き合い方も含めて相談しながら買ったほうが、絶対にハッピーな生活を送れると思うんです。

F:西村さんはEC否定派なのですか。

西:否定派ではありません。扱う商品によります。お店に行かずにオンラインでサッと買ったほうが圧倒的にいい商品もある。でも家とか保険とかを、何の説明もなくポチポチECで完結させてしまうのはどうかと思います。果たしてそれがハッピーなのかと。クルマって、その中間くらいに位置する商品だと思っています。見ないで買えちゃう部分もある。でもしっかり見ておきたい部分もある。

F:カーセンサーを通して買って、後であの店はひどい、クルマもポンコツだ。やいカーセンサーめ! どうしてくれるんだ! というお客はいるのですか?

西:それはもうしょっちゅうです。ただそうしたクレームには2種類あって、お店のほうが利益優先に過ぎたり、営業担当のノルマが厳しすぎたりで、「これは明らかに店が悪いだろう」というケース。これが何件も重なると、いわゆるブラックリスト入りとなり、掲載をお断りすることもあります。もう1つはお客さんに問題があるケース。クルマは工業製品ですから、いつかは絶対に不具合が発生しますよね。買ってからメンテを一切しないで、車検の時も整備もしないでユーザー車検で持ち込んでおいて、それで壊れたら「製品の過失だ!」と大騒ぎする(苦笑)。

F:ひでえ(笑)。それをカーセンサーに文句を言ってくるんだ。完全にクレーマーじゃないですか。

西:ぼくらの立場でクレーマーとは言えないのですが……。買ったあとは整備に1円も出したくないという人って、実は結構いるんですよ。高級時計なんかもそういう人はいるんじゃないですか。

F:なるほど。面白い、面白い。ところでメーカーは中古車市場をどう見ているのでしょう。