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 一昔前……いや、10年を「一昔」と言うのであれば、二昔か三昔も前の話になろうか。

 中古車販売は、クルマを愛し、誠実に事業を営む店がある一方で、「利益率の高いボロい商売」という認識で手がける人も数多くいた。そこにはさまざまな人が入り乱れ、猥雑な人間模様があった。インチキ臭いブローカーがアタッシェケースに現金を詰め込んで、フェラーリのデイトレに勤しんでいたりした(私は往時深夜の青デニで、その“現金取引”の現場を目の当たりにしたことがある。それじゃこれカネです。はいどうも、これがキーでこっちが書類一式です……なんて調子で、僅か5分程度で巨額取引が成立していた)。裏社会とのつながりが噂されたこともある。

 現在はどうなっているのだろう。今でも中古車販売は、粗利の大きなボロい商売であるのだろうか。以下、尻切れトンボで終わってしまった前回の最後の部分からお届けする。

(前回はこちら

フェルディナント・ヤマグチ(以下F):要するにオークションに行って展示場にクルマ並べて売っていても、それほどもうからないということですか。

カーセンサー編集長 西村泰宏氏(以下西):はい。それだけではもう儲かりませんね。オークションで買ってくるタイプの中古車屋さんが儲けるには、そこに付加価値を付けて、ある程度高い値段で売れるという仕組みを作らなければなりません。それができているところは、比較的儲けられていると思います。

カーセンサー編集長、西村泰宏氏

F:オークションで落としてきたクルマに付加価値ですか。それはどういう……。

西:それはですね。例えばランクルの80を買ってきて、70とか60ルックに改造して売るとか。ハイエースもそうですね。クラシックな顔を付けて、素敵なカラーリングに塗り替えて、内装も純正にはないものに張り替えて、おしゃれに改造して販売する。今これが人気なんです。元値よりだいぶ利益を乗せてもすぐに売れていく。いうなればセレクトショップの別注のような感じです。

ランクルやハイエースの中古を多く扱うFLEXが手がける“Renoca”(リノカ)。リノベーションカーの略でリノカなのかそうなのか(笑)顧客のライフスタイルに合わせた、新車では手に入らない付加価値が盛り込まれているそうです。

F:ビームスの別注みたいな(笑)。

西:そうですそうです。もともと商品の素養もいいのですが、さらにひと工夫加えて、見たこともないようなクルマに仕上げてしまう。何か今っぽくて洒落てるよね、と比較的お金に余裕のあるアーリーアダプター層が喜ぶ要素が入っている。そんなクルマは台数も限定だから、他の人とカブることもありません。もしカブったとしても、相手は大抵イケてる人ですから、おやご同輩、という感じで行った先で仲良くなったりするんです。

F:なるほど。

お金を持っている人は、クルマがあまり好きじゃない?

西:「いつかはクラウン」じゃありませんが、昔はクルマのヒエラルキーが明確でした。同じクルマでも、タイプRだとかタイプSだとかの設定があって、やはり明確な序列がありました。今はそれが崩れていて、あえて不人気で人とカブらないクルマを選ぶとか、そんな人が増えているんです。僕らが今注目しているのは、お金はあるけれどもクルマ好きじゃない人たちです。

F:昔は「お金がある」人はニアリーイコールでクルマ好きでした。大抵はクルマにお金をかけていたものです。

西:はい。昔はほとんどの人がクルマ好きだったので、「お金を持っているクルマ好き」と、「お金を持ってないクルマ好き」というのが存在したのですが、今はお金を持っている人が、実はあんまりクルマ好きじゃないんですよ。例えばベンチャーを起業した人とか、YouTuberで億単位の年収がある人とか。もちろん、お金を持っているクルマ好きはゼロではありませんが。

F:買うとしても節税効果としてのクルマですよね。

西:そうです。別にフェラーリとかランボが特別に好きなわけじゃないけれど、税金を払うくらいならとりあえず買っとくか……みたいな。そんな人はたくさんいますよね。その辺の感覚は、昔に比べると大きく異なります。

税金を払うのが嫌ならフェラーリでも買ってくださいよ」と税理士から勧められるケースもある。で、その税理士は販売店からキ(以下略).....魑魅魍魎である。

F:先程カーセンサーには50万台のクルマが掲載されていると伺いました(取材時。6月24日時点では約49万台)。その平均単価はいくらくらいになるのですか? 非常に数字が出しにくいと思うのですが、車種も年式も輸入も国産も全部ひっくるめた、うんと乱暴な数字で結構です。