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フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):中古車オークションってあるじゃないですか。次から次にクルマが出てきて、魚のセリみたいに価格がポンポンと上がっていって、はい落札となるやつ。あそこがいまコロナの影響でひどいことになっていると聞きました。不人気のクルマだと入札が入らず、どんどん流れていってしまう日が続いていると。

カーセンサー編集長 西村泰宏氏(以下、西):事実だと思いますよ。最近はまた賑わい始めていると思いますが、そもそもここしばらくは、新型コロナでオートオークションそのものが開催できない会場もありましたから。登録業者なら、会社にいながらオンラインでも入札が可能です。それでも忙しい業者さんが、わざわざ会場まで足を運ぶ。こんなネットの時代になっても、会場には結構な人数が集まるんですよ。

西村泰宏カーセンサー編集長。今回はオンラインでお話を伺った。

F:最終消費者と同じように、実車を見ておかないと不安、ということなのでしょうか。

西:それもありますが、やはりあの会場独特の匂いとか空気感に触れておきたいというのはあると思います。会場に行っても入札はそっちのけで、ずっと食堂でダベっているオヤジさんも多いんですよ。オークションは情報交換の場でもあるんですね。

F:なるほど。何しろプロ中のプロが大勢集っている。業界の最新情報を得るにはこれ以上の場はありませんものね。

西:そうなんです。仲のいい業者さん同士で入庫状況や売れ行き動向の情報を交換したりという。一種の社交場みたいな感じになっているので。

F:みなさん会場で必死になって価格ボードを見つめているのかと思いました。

西:今は必死になって価格を見て、こうカチカチやっているのは、ほとんどが外国の人なんですよ。

F:外国人がオークション会場に?

西:はい。いま大変な数の外国人バイヤーがオークション会場に詰め掛けています。もしかしたら成田空港より外国人比率が高いかもしれません(笑)。会場に行くと、アラビア語のポスターとか、見たこともないような言語のポスターがバンバン張ってある。分かりやすく言うと、ターバンを巻いたひげもじゃの人が大勢輪になって話していたりします。そして日本人バイヤーが見向きもしないような、廃車寸前のクルマをこぞって買っていく。

F:ひょえー。そんなことに……。

西:そうしたローエンドなクルマが売れる一方で、ポルシェ911のGT3とか、コンディションのいいR32、R33、R34のGT-Rとか、80スープラとか、そんな希少車があっけにとられるくらい高い値段でどんどん落札されていく。あとランクルとかハイエース等の商用車も人気ですね。中東やアフリカ、アジア圏で高い需要がありますから。アルヴェル(アルファード/ヴェルファイア)なんてもう根こそぎガサッと買っていかれる感じです。

アルファードやヴェルファイアは東南アジアで人気があるモデルですが、タイでの新車価格は388万9000バーツから(日本円で1300万円以上!)。これじゃ新車は超お金持ちしか買えません……。

AD高橋マン(以下、マン)マン:フェルさんに基礎知識として入れておくと、日本って世界で一番中古車が安いと言われているんですよ。

F:そうなの? 昔ジャガーの中古は世界で一番安いと聞いたことがあるけど。

マン:ジャガーだけじゃありません。国産のクルマはもちろん、ポルシェもメルセデス・ベンツもベントレーも、間違いなく日本の中古が世界で一番安いです。理由としては、前回も話があったように日本では新車の方が多く売れる。そして中古車を買う人もなるべく新しいものを欲しがる傾向があるからです。一方で品質が高い日本車は年式が古くても壊れにくい。日本のオークションで安く落札できれば、輸送費を含めても向こうで高く売れて結構な利益になるという構図があるんです。

F:そういや海外に行くと、「山口酒店」とか日本のお店の塗装そのままのトラックが走っていたりするもんね。昔バハマに行ったら、大昔の富士急の塗装のバスが走っていた。入り口に「ワンマン」なんてそのまま書いてあったりして(笑)。