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 今回お届けするのは、「マクラーレンGT」の試乗インプレッションである。

 本来であれば、試乗、インポーターインタビュー、そしてうまい具合に街中で対象者が見つかればユーザーインタビュー、と続けていくのが当欄のあるべき姿なのだが、今回は試乗記1本で終了である。

 新型コロナの影響により、マクラーレンの日本法人は英国本社から外部との接触を厳しく制限されており、インタビューすら許されない、というのが実情である。

 ここでもまた「コロナの影響」である。自動車業界は深刻な販売不振に喘いでいるが、それを評論する業界もまた、少なからぬ被害を受けているのである。
 緊急事態宣言が明けたら、少しは状況が変わるのだろうか。

これが噂のマクラーレンGTだ。最高出力620馬力。最高速度326km/hである。

 ともあれ車両本体価格2645万円の超高級車である。粗相があってはならない。
 襟を正して乗らねばなるまい。

 さすがにこの手のクルマはいつも通りの1週間の長期貸し出しが許されず、金曜預かり月曜返しという3泊4日のスケジュールと相成った。それでも週末を挟んでの試乗は「極めて異例」とのことである。ありがとうございます。

 F1の世界でも名高いレーシングコンストラクターであるマクラーレンが、1993年、初めてマクラーレンの名を冠して市販したのは「マクラーレン F1」。1億円のプライスタグを付けたこのクルマはわずか64台の販売に終わった。

 改めて市販車部門であるマクラーレン・オートモーティブを設立したのが2009年のこと。2011年には初の量産車である「MP4-12C」を発売し(日本では翌12年から発売)、以来順調に販売台数を伸ばしている。実は日本はマクラーレンにとって北米、英国に次ぐ世界3位のマーケットであり、昨年は日本国内で実に353台(!)もの台数が販売されている。

 ちなみにスーパーカーという括りで見ると、フェラーリが870台、ランボルギーニが678台である。マクラーレンは今や我が国で3番目に売れているメーカーなのである。

 ランボに関してはSUVであるウルスで台数を稼いでおり、フェラーリにはFRの812スーパーファストや、同じくFRで4人乗りのGTC4 LUSSOがある。ミッドシップ2シーター“のみ”のラインナップで、日本市場第3位なのだから、大健闘と言っていいだろう。

 ちなみにジャパニーズスーパーカーの日産GT-Rは331台、ホンダNSXは26台である。

 フェラーリやアストンマーティンの試乗がそうであるように、マクラーレンの試乗にも距離制限が設けられている。上限200キロ。これを超えることは許されず、それ以上の距離になる場合にはローダーを用意せよ、とのことである。これは試乗車のリセールを考慮してのことだろう。

 ご存じの通り、スーパーカーに限らずクルマは走行距離が少なければ少ないほど高く売れる。無駄な走行は避け、ポイントを絞った試乗を心がけねばなるまい。

完全にイッちゃってる2人

 例によって高橋マンちゃんからクルマを受け取る。

 待ち合わせの場所に現れたマクラーレンGTは、そのボディからジワジワと湧き出すオーラが桁違いである。待ち合わせの場所にクルマが止まると、周囲の人が呆気にとられて見つめている。

 ガルウィング式のドア(マクラーレン的にはディヘドラル:Dihedralと呼ぶ)が左右同時に跳ね上がり、右側の運転席からマンちゃんが、左の助手席からマイトのY氏が降りてくる。2人とも完全に目が三角になっている。要するにイッちゃってるのだ。

上に跳ね上がるディへドラルドア。

 六本木から待ち合わせの場所までの短い距離で、スーパーカーの毒にすっかり当てられてしまったのだ。

 恐るべしはマクラーレン。それにしても試乗車の受け渡し場所にマイトのYがなぜ一緒に? めったに乗る機会のない珍しいクルマだから見物に来たのかと思いきや、さにあらず。高橋マンちゃんによれば、インポーターからの受け取りに掲載媒体の社員の同行が必要だったのだという。

 かように大変なクルマなのである。いよいよ襟を正さねばなるまい。

 「このクルマを運転するにはいくつかのお作法があります。パッと見て直感的に分かるものじゃありません。マクラーレンの人に教わってきたので、その辺りを走りながらインストラクションします」

 iPhoneみたいにはいかないのだ。