トヨタの源流である豊田自動織機製作所(現:豊田自動織機)の設立は94年前の1926年。
 その自動車部門がトヨタ自動車の起源であり、開設されたのが1933年である(トヨタ自動車の創立は1937年8月28日)。
 一方、ダイハツ工業の源流である発動機製造株式会社の創立は1907年で、今から113年前。
 オート三輪の製造販売を始めたのは1930年である。会社の設立も自動車の販売も確かにダイハツは先輩なのだ。

「小ささ」のこだわりが尋常じゃない

F:えー! 知りませんでした。漠然とトヨタが日本で一番古い自動車会社なのかと思っていました。

:実はダイハツのほうが長い、古い。長い歴史をしたたかに生き抜いてきた会社なので、いろいろな意味で驚かされることはやっぱりたくさんあります。

F:どのようなところでしょう。

:一つはダイハツブランドへのこだわり。これが非常に強い。
 そしてもう一つが「小ささ」へのこだわりです。

F:小ささへのこだわり、それは小さいクルマということですか?

:クルマだけでなく、すべてにおいてです。クルマもそう。部品もそう。「同じ機能だったらダイハツが世界で一番小さく設計する。世界で一番軽く設計する」。こういうマインドが非常に強い。先ほど1ミリ1グラム1秒1円という話をしましたが、これはダイハツの全社員が共有している思いです。それはやっぱり会社の中に深く深く浸透したダイハツのDNAだと私は思っています。

F:ダイハツのDNA。なるほど。

:エンジニアとしてトヨタで育ってくると、どっちかというと時代の進化に合わせて、より良いものを造ろうという発想になりますよね。

F:章男さんもそう言っていますものね。

:ええ。でもいいものはイコールで……。

F:お値段もいい。値段が上がっちゃう。

:そう。値段は高くなるし、スペースも取るようになってしまう。もちろんそれはそれで決して悪いことでもないですし、トヨタのクルマは日本でも世界の市場でも高く評価されている間違いなく優れた製品です。ただ、ダイハツの魂とはちょっと違うかな、という気はしますね。

F:よくトヨタは「乾いた雑巾(ぞうきん)をさらに絞る会社だ」と言いますね。トヨタのコスト管理はそれこそ世界一の厳しさじゃないですか。でもダイハツに来てみたら、トヨタの雑巾はまだまだ濡れていた、トヨタの絞り方はまだまだ甘かった、ということですか。

:うーん、というよりも、トヨタとはちょっと視点が違うな、という感じですね。

F:視点が違う。どのように違うのですか?

:トヨタにいると、いろいろな部品で「世界一安い部品です」と。まあ、いろいろな製品企画で設計実験が報告に来ると、「世界一安いです」と言う。例えば横軸に部品の価値を取り、縦軸に絶対値を取る。当然右上がりになっていくわけです。ゴウコウ。量産ですね。今使っている部品に対して……。

F:口を挟んでスミマセン。「ゴウコウ」って何ですか。

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