通常ならここでメルセデス・ベンツ日本の方から39年ぶりの大変身に関する裏話やら輸入に関する苦労話やらを伺うところなのだが、今回は少し趣が違う。

 インタビューをメルセデス・ベンツ日本の本社がある東京・品川ではなく、はるか遠くの千葉県は習志野工業団地で行うというのである。習志野は遠い。近いようで遠い。しかも近くに何もない。せっかく遠出したのだから、ついでにココへ寄っていこう、という場所がない。

 近くのZOZOマリンスタジアムも時節柄野球はやっていないし、ディズニーランドも休園中だ。コロナめ。

 「メルセデスさんが、ぜひ習志野まで来てくれと言っています」

 AD高橋マンちゃんも、いささか困惑した表情で言う。

 「私も『取材なら本社でお願いします』と何度も言ったのですが、ともかく来てくれの一点張りです。習志野に来て、ぜひ試乗車に同乗してくれと」

 「試乗なら散々したじゃない。550にもディーゼルにも1週間ずつ乗って、両方ともスキーに行った。ディーゼルなんか娘にまで運転させた。これ以上何をしろって言うのよ」

 「何か特設の勾配路があるらしいんですよ」

 「それも六本木のメルセデス ミー東京で体験しているよ。正直習志野まで行くのはメンドくさい。何とか断ってくださいよ」
 「はぁ……」

 可哀想なADマンちゃん。フェルの担当になったのが運の尽き。これも定めと諦めてください。

 すったもんだの揚げ句、渋々赴いたのがメルセデス・ベンツ日本(MBJ)習志野事業所である。工業団地の先の先、道を進むほどに建物が少なくなり、だんだん不安になってくる。

 ようやくたどり着いた先で、満面の笑顔で迎えてくださったのが広報担当のS氏である。

そこにはジャンプ台が待っていた

 挨拶もそこそこに、建物の裏手に案内される。そこに待っていたのは、鉄骨で組まれたジャンプ台のような、巨大な試走コースであった。

ここが噂のテストコース。遠かった……。
ここが噂のテストコース。遠かった……。

 左右に大きく振られる段差。横にゴロンと転がってしまいそうな傾斜路。そして上に登ると身のすくむような思いをする高く急勾配の坂道。いずれも危険を伴うコース設定のため、訓練を受けた専門のドライバーが運転する。「試乗」と言っても、ドライバーの横に乗って、その運転を指をくわえて眺めるだけの“体験試乗”である。

 「今回はあえて、フェルさんが以前に乗っていらした旧型を用意しました。Gというクルマが、実際にどれほどの実力があるかを、ここで体験していただこうと思います。新型になっても四駆の仕組みそのものは一緒ですから、悪路走破性は変わりません」
 こう説明を受けて黄色い塗装の試乗車に乗り込んだ。

 懐かしのG350d。遠い記憶がよみがえる。新型に乗ってしまった今となっては、やはり内装がぐっと古めかしく見える。

 ハンドルを握るのはカスタマーサービス・トレーニング課の西 義之さん。特別に訓練を受けたドライバーだ。春の人事異動では商品企画の部署に移るのだという。運転をよく知る人が商品企画を行うのは実にいいことだ。

西さんの運転でコースを1周。
西さんの運転でコースを1周。

 まずは西さんの運転でコースを1周。
 低い方の坂道を登り、下る。すごいですね。
 左右に振られたモーグルを越える。すごいわー。
 右に大きく傾いた傾斜路をゆっくりと上がる。ホントすごいと思います。
 最後は急勾配のタワーに登る。ここまで登ると海がきれいに見える。ああいい眺め。

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