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F:いいお話です。有田くんじゃないけど、泣きそうです。
 組織の話、チーム作りのお話をたくさん伺いました。最後にちょっと、クルマの話も聞かせてください。

:クルマの話?

「安全運転で」という声にはどう対応?

F:はい。RAV4についての具体的なお話です。今回のモデルチェンジは、前モデルの4代目で年間95万台も売れていたクルマを、根底からガサっと変えてしまう大きなものでした。かえすがえすも大きなチャレンジ、冒険的なチャレンジだったと思うのですが、そのモチベーションはどこから来たのですか。怖くなかったですか。

:世界的な流れとして、SUVのマーケットは、今乗りに乗っています。メチャ盛り上がっています。でもこの流れは必ずどこかで変わる。いつかは必ずシュリンクする。クルマってやっぱり流行り廃りがありますから、どこかで必ず落ちてくると思うんです。その落ちてくるタイミングを少しでも先延ばしさせるには、マーケットそのものを活性化させなきゃいけません。そのためには、異質な商品も投入するべきだと思うんです。

F:せっかく売れている商品をガラッと変えると、売れなくなってしまう可能性もある。怖くありませんでしたか?

:そりゃ怖いです。

F:当然トヨタの社内には、現状維持でいこうや、キープコンセプトで安全にやろうよ、という声も少なからずありましたよね。

:すごく回答しづらい質問なんですが、それはやっぱりありますよ。

F:その反対意見に対しては、何とお答えされたのですか? 売れなかったらどうするつもりだ、と詰問されたときは、何と答えたのですか。

:黙っておきました。黙って時間が過ぎるのを待つ(笑)。
 厳しい会議も、変に反論するとそこで100倍返し食らうから、黙っておいた方がいいんです(笑)。

F:でもそれじゃ済みませんよね(笑)。おい返事をしろと言われますよね。

:それがですね、実際にウチの会社って、こんな大企業でありながら、最後は「まあチーフエンジニアがそこまで言うならそれでいいんじゃないの」という雰囲気が結構あるんですよ。そこはトヨタという会社のいいところだと思います。企業って大きくなると、やっぱりどんどん動きづらくなってくる。でもそこに社長の豊田(章男氏)がああやってハッパをかけるから、社内外に向かってどんどんメッセージを発信するから、これは俺たちもちゃんとやらなきゃイカンよね、という雰囲気になってくる。

F:章男社長がそういうムードメークをしておられる。