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:「総理大臣をやれ」と言いますね。防衛も、外交も、社会福祉も、公共事業も、今なら新型コロナ対策も考えなくちゃいけない。さらに細かい地元対策もやらなくちゃいけない。トータルでどんな国にしていきたいかを考えたら、やっぱり譲るべきところでは譲るようになると思うんですよ。クルマもそう。どんなクルマになってほしいかを考えたら、「みんなで考えよう、みんなでやろうよ」って絶対になる。

 ここでもやっぱり、さっきお話しした、人間が一人でできることなんて知れている、という話になるわけです。私だけの力じゃどうにもならない。だから広報も営業もマーケティングにも入ってもらう。そして技能の人の力、テクニシャンの力も借りる。我々開発というのは図面の世界、エンジニアの世界。それとは別に、テクニシャンの力が必要です。テクニシャンというのは、むしろ職人に近い人たちです。

気持ちいいか悪いかでやっちゃおうよ

F:テクニシャンはどういう職種に当たるのですか。テストドライバーですか?

:ええ、評価ドライバーに近いですね。その評価ドライバーに「気持ちいい」と思ってもらう。どれだけ図面で立派なことを語っても、彼らに気持ちいいと思ってもらわなきゃ、全然意味がない。トヨタの評価ドライバーの感性って高いですよ。鈴鹿(サーキット)なんかに行っても、レベルが非常に高い。

F:レベルが高い。それは速く走れるということですか。

:速く走る、走らないじゃないんですよね。例えば鈴鹿で5周回るとする。すると5周ともすべて同じラインで、コンマ秒単位のタイム差に収めて帰ってくる。それはうんと感性が高くなければできないことです。

 実は今回、私と一緒にやってきたテクニシャンがいるんです。彼と一緒になって、トヨタのクルマづくりを、寸法とか数字なんかよりも、気持ちいいか悪いかでやっちゃおうよと話してきたんです。その方がお客様にも合っているんじゃないかと。RAV4の開発は、数字よりも官能評価を優先したんですね。そうしたら何が起きたか。メンバーがスッと自然に(チームに)入ってくるようになった。

 官能評価優先のクルマ造りを見て、技能系の現場の人たちが集まってきた。そうすると若いエンジニアで机に座って図面ばっかり描いていたヤツが、現場に出ていって生の声を聞くようになった。技能系の人間は何よりも経験を持っていますから、聞けばいろいろなことを、エンジニアが想像もできなかったようなことを教えてくれる。エンジニアは、何とかそれに応えようとする。上司に指図されなくたって、必死で頑張るようになる。

 それを繰り返していると、みんながクルマ屋になってくる。NVHをやっている人間も、やっぱり加速はもうちょっとあった方がクルマとして優れているよね、NVHがちょっと悪くなっちゃうけど、クルマ全体としてどっちを取るかと言ったら、やっぱり加速だよね、と自分の担当を忘れてクルマ屋の一員になっていく。

 もしそこにフェルさんみたいなワガママで自分勝手で欲張りな人がいたとしても、一緒にやっていれば、やっぱり仲間になるんですよ。クルマ屋の一員になるんですよ。

 チーム作りって、そういうことじゃないですか。それをちゃんとやっていれば、いいクルマができるんじゃないですか。そうやって造ったのが、今回のRAV4です。