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:新城南工場の仕向けは、約4割がカーメーカー向け、約2割が市販用。残りが輸出用です。

 それでは実際に工場をご覧いただきましょう。マイクロバスで移動します。今日はADVANの上着を用意しています。工場内は場所によりゴムの臭いがキツイエリアがありますので、こちらをご着用ください。

F:これはもらえるんですか?

:差し上げられません。貸すだけです。

マイトのY:恥ずかしいなぁもう……。子供じゃないんだから、なんでも欲しがらないでくださいよ。だいたいこれを持って帰っても、着る場所なんかないでしょう。

F:家の掃除をするときとかさ。

マイトのY:掃除なんか自分でしないくせに。

:これから行く工場は、いわゆる工場見学コースがありません。特に南工場は、一般見学を一切受け入れていないんです。無人の動力車が走っていたり、巻き込みの可能性がある装置が稼働していたりします。十分にご注意をお願いします。ポケットに手を入れて歩かない。ネクタイを外に出さない。このルールを順守してください。

F:はーい。

マイトのY:「はい」は短く!

 マイトのYは、なぜか朝から機嫌が悪い。前の原稿が2日ばかり遅れたからだろうか。怒ると体に悪いですよ。

 マイクロバスで事務所棟から工場棟へ移動する。
 こちらでご案内いただくのは、新城工場技術1課長の亀田慶寛さんである。

新城⼯場技術1課⻑の⻲⽥慶寛さん。金正恩国家主席のミサイル視察現場のように見えるが、正真正銘、横浜ゴムの工場内である。

キモは「混ぜ方」にあり

亀田慶寛新城工場技術1課長(以下、亀):ここでご覧いただくのは、材料の混合工程です。ゴムは混合が命。「練る」という工程が何よりも大切です。タイヤの特性、機能を出すためには、中に入れる材料を、分散性よく練らなきゃいけない。これがキーになります。

F:分散性。満遍なく混ぜるには、時間をかけてゆっくり混ぜなければいけませんね。

:そう思いますよね。時間をかけてたくさん混ぜれば、たぶんよく練れるだろうと想像しますよね。でも相手はゴムなんです。たくさん練り過ぎちゃうと、ゴムが軟らかくなり過ぎて、しなやかな、引っ張ったら元に戻るというゴムの特性が失われてしまう。

F:どうして混ぜ過ぎるとゴムの特性が失われるのですか。空気が混ざってしまうからですか?

:例えばプラスチックなんかも、熱を持つと軟らかくなってしまいますよね。もろくなってしまう。

F:熱の問題ですか?

:その通り、熱の問題です。ゴムは高分子なので、混ぜれば混ぜるほど発熱してしまいます。どんどん熱が上がってくると、どんどん分子が切れてしまう。そして良質なゴムがダメになってしまうんです。たくさん混ぜれば、確かに分散はいいけれども分子が切れてしまって、ゴムがそれだけ弱くなってしまう。熱をかけながら混ぜ過ぎるとゴムは弱くなります。

F:なるほど。分散はよくしたい。でも混ぜ過ぎると熱が上がり弱くなる。