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「どうしてこんなことになったのか……」

 「工場見学」。

 なんと心躍る言葉であろうか。

 旧新日鉄の千葉県君津製鉄所、マツダの広島本社工場、ジヤトコの八木京都工場、トヨタの元町86GRMN工場、タイ・バンポー工場、日産のGT-Rの工場、クボタのアメリカ工場、フランス工場……(過去記事が読めないんですね。どうにかならんもんですかね……)。

 今までに多くの生産現場を訪問し、モノ作りの最前線をリポートしてきた。

 いずれの工場においても、見るもの聞くことのすべてが珍しく、新しい発見があり、驚きがあった。
 だが今回の工場見学は、今までのものとは話が違う。

 取引先を除き、部外者立ち入り禁止である。
 マスコミ初登場である。

 何で社外の人がここに、と幾度となく従業員の方に訝しい目で見られた(マスク姿だったこともあるのだろうが)、文字通りの初取材である。

 勿体つけて申しわけないが、業界の方であれば、この取材がいかにイレギュラーなものであるかご理解いただけると思う。

 「どうしてこんなことになったのか……まったくワケが分かりません……」と現場で説明してくれたエンジニアの方が何度も首を捻ったスペシャルリポートである。

 以下、横浜ゴム新城南工場潜入リポートをお届けする。
 クドいようだが、メディア初登場である。

 見学したのは横浜ゴムの新城南工場。
 「ADVAN」をはじめ、乗用車用の高性能タイヤを生産する、横浜ゴムの最先端工場である。

こちらが横浜ゴムの新城南工場である。モザイクの無いクリアな写真はこれが最後。以降は“大人の事情”により、「本当に工場の中に入ったのか?」と読者諸兄から疑われてしまうような写真が続く。

 工場はいくつかのブロックに分かれている。それぞれのブロックで作られたパーツが最終的に1カ所に集められ、熱をかけながらギュッと圧縮して1本のタイヤが出来上がる。

 溶けたゴムを鯛焼きのような型の中にトロトロと流し込んで、パカッと開けたら一丁上がり……というような工程を想像していたのだが、どうもそうではないようだ。

 最初にご挨拶をいただいたのは、横浜ゴム新城工場・新城南工場の副工場長、川瀬博也さんである。

川瀬博也副工場長と名刺交換。心なしか、目が泳いでいらっしゃるような……。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):今日はお忙しいところご協力いただいて恐縮です。写真をたくさん撮らせていただきたいと思いますので、ご協力よろしくお願いします。

川瀬博也副工場長(以下、川):しゃ、写真撮影? それはちょっと聞いていないですね。いや、聞いていたってダメです。工場の中は絶対に撮影禁止です。そもそも今回ご案内する新城南工場のコースは、一般向けの工場案内では公開していない、まったく違う特別なものなんです。どうしてこんな取材が許可されたのか、私も不思議でならないんですが……。ともかく撮影はマズい。

マイトのY:御社の方からご提供いただける広報用の写真はございませんか?

F:そんなんじゃダメよ。全然リアルじゃない。我々が撮らなきゃ意味がない。

 (副工場長を振り返って)記事で使うすべての写真を事前にお見せします。モザイクをかける必要のある部分をご指示下さればその通りにします。国会答弁の資料のように海苔弁当みたいになっても構いません。なんとかご許可いただけませんか?

 横浜ゴムの方が会議室の隅に集まって、しばしの鳩首協議。
 工場見学波乱の幕開けである。

:それじゃ必ず掲載する写真を事前に見せていただくということで……(シブシブ)。他の写真は保存せずに必ず消去してください。同業の人も読んでいるでしょうから。どんな装置が入っているか見られるのは本当にマズいので。

F:分かりました。ご協力感謝します。