F:お客さんはそこまで「ちょんと踏んだらドンと出る」という、一種30年前のクラウン的な味付けに慣れきっている、ということでしょうか。
藤:それはあると思いますよ。実際にそうした方が売りやすいわけですし。
F:でもそれは簡単に直せますよね。アクセル開度を調整するだけの話で。
藤:ええ、直そうと思えば直せます。
F:しかしそこを変えてしまうのは、マツダの本意ではないと。
藤:踏めば踏むだけ走るというふうに考え方を変えてきて、「人間重視」で造り込んできました。ですからそこは我々が正しいと思っています。ただ、お客様によっては、やはりガツンと来るクルマが欲しい人もいらっしゃる。ですから少し考えなきゃいけんかな、とも思っています。
F:モード切り替えのスイッチを付けて、「ちょん踏みでドン」のパワーモードをつくるとか。
藤:そうそう。でもそのスイッチを入れると、「私たちの考えとは違いますが、本当にそれでよろしいですか?」みたいなサインを出すとか。そのぐらいの哲学を持ってやりたいですよね。フェルさんの言うパワーモードで走っても、乗り慣れてくれば、やがてマツダ推奨のノーマルモードの方がいいなと分かってくれると思う。最初の入り口としては自分の好みでガンと走ってみて、疲れてきたら元に戻せばいい。そうしたら、結局こっちの方が良かったねと。そうなればいいと思っています。
F:なるほど。
藤:そういうことを何か考えなくちゃいけないな、と思っています。
思いがあっても、売れなくては仕方ないのでは?
F:切り替えスイッチを付けるのは、それほど大変ではないですよね。多少のコストはかかるのでしょうが。
藤:コスト的にも大したことはないです。アクセルペダルとエンジンと制御の問題なので、少し強めにというふうに調整すれば簡単にできるんです。実は今でも日本とアメリカって少し制御を変えているんです。アメリカでは高速道路に入るときに、一時停止してから合流するところがたくさんある。ああいう場所では、ガッとした加速がないと合流できないじゃないですか。専門用語で“ピックアップ”と言うんですけど、アメリカ向けはそれを強くして、ガッと走れるように調整しているんです。
F:同じマツダ3でも、アメリカ向けはピックアップがいい。要するに「ちょんと踏んだらドンと出る」。
藤:ドンと出る。多少首が持っていかれるくらいの加速で出ないといけない。アメリカではその方が安全なんです。我々は既にその仕様があるわけです。だから変えようと思えば簡単に変えられる。でも我々には、やっぱり「こういうふうに走ってもらいたい」という思いがあって。
F:難しいところですね。思いがあっても、売れなければ仕方がない。
藤:ですからもう少し何かしなくちゃいけないのかな、というところはありますね。
F:いま藤原さんがおっしゃった「マツダの思い」というのは、会社として発信しているのですか? 私は今日初めて伺いましたが。
藤:それが、あまり積極的に発信してないんですよ。
F:どうして発信しないんですか。言ってくれなきゃ我々だって分かりません。何か特別に言わない戦略があるんですか。

さあさあ、盛り上がってまいりました。
ここからキナ臭い話が始まるのですが、そろそろ会社に行く時間です。いったんペンを置きますね。それではみなさまごきげんよう。アディオス!
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