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ホンダ四輪R&Dセンター LPL Meister 主任研究員の水上 聡さん。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):はじめまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。今日はよろしくお願いします。

水上 聡氏(以下、水):よろしくお願いします。

F:早速ですが、新しいNSXに関して伺いたい点が3つあります。1つは11年の時をおいて、なぜ今なのか。ホンダはなぜNSXを出したのか。2つ目は、なぜアメリカで設計し、アメリカで造っているのか。3つ目がGT-Rより遅いと言われていますが、それは事実なのか。もし本当であれば、ホンダはそれをどのように受け止めているのか。この3つです。

:それでは順番にお答えしましょう。まず、なぜ今NSXなのか。これは簡単です。

 「私たちの夢をお客様に提供したい」というものです。これがホンダのNSXに対する思いです。

F:私たちの夢。ホンダの夢をお客さんに提供するということですか?

:そうです。我々ホンダは、スーパースポーツを快適に操る喜びをみなさまに提供したいと思っています。これは先代のNSXからブレていないコンセプトです。NSXは、誰もが乗れる人間中心のスーパースポーツです。先代が出たころは、この手のクルマは力でねじ伏せる、運転の難しい特殊なクルマを、力で押さえつける征服感こそが楽しみ、というようなニュアンスがあったんです。でもNSXは違います。パッと乗って、誰もがサッと高度な運転ができる感覚を提供したい。クルマを快適に操る喜びを感じてほしい。これがNSXに込められたホンダのメッセージだったんです。

F:パッと乗ってサッと高度な運転。それによる喜び。うーん。そのメッセージを、もう少し具体的な言葉にできますか?

:はい。それこそが我々の言う「パワドリ」です。

F:パワードリフトの略ですか。さすがNSXのチーフエンジニア。勇ましいですね。

:いえ、パワドリは当社のスローガンである「The Power of Dreams」の略です。社内ではそう言うんです。ちょっと略しすぎましたか(笑)。

F:なるほど。「The Power of Dreams」でパワドリ。

NSXは先行検討から日本が主体です

 「The Power of Dreams」。これは本田宗一郎翁の「夢を力に」が語源になっていると思われるが、どうだろう。

F:では2つ目のアメリカ設計、アメリカ生産はどうでしょう。やはり一番売れる場所がアメリカだからですか?

:よくアメリカアメリカと言われるのですが、今回のNSXは先行検討から日本が主体でやっています。ご存じの通り、ホンダはグローバルで開発しています。アジアにはタイを中心とする研究所があって、アジアでよく売れるクルマはそちらで研究開発をしています。同じようにアメリカでも研究開発しています。こちらはかなりの歴史がある。もちろん日本でもやっています。「ホンダ」という会社をトータルで見て、どこの研究所で開発をして、リソースをどのように配分していくのが効率的かを常に見ているんですね。開発のボリューム全体を俯瞰してリソースの配置を考えたときに、このNSXはアメリカでやるのがベストだろうと。それで基本技術の部分をアメリカに移管した、というのがもともとの流れです。

F:基本技術を移管した。NSXはゼロからアメリカで開発されたクルマではない、ということですか?

:違います。ゼロからアメリカではありません。

F:移管というのは、どれくらいできてから渡すものなのですか。何割くらい、と比率で言うことはできますか?

:比率で言うのは難しいな。行ったり来たりしてお互いに絡みながら進めていくので。

F:行ったり来たりしていると、開発効率が悪そうですね。