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:そうですか?

:もう少しかなぁ。

F:まだダメですか。

:要するに「クイズ100人に聞きました」を、レースを見に行かない普通の人を対象にやってみれば分かるってこと。「F1って知ってますか?」「誰を知ってますか?」と聞いたら、おそらくほとんどの人は鈴木亜久里、アイルトン・セナと出て、それで終わっちゃう。当時(バブル期、ホンダF1の全盛時代)は銀座のど真ん中で聞いたって、3割くらいの人が、セナ、プロスト、鈴木亜久里の名前は自然に出たわけでしょう。今は3人もいないよ。ハミルトン、フェルスタッペンって答えられる人なんて。まあそれは、今日のGTも同じなんだけど……。

F:うーむ……。

:だから俺はさ……。


 以降しばらく田村さんのレースに対する熱い思いが続く。
 田村さんはレースの話になると止まらなくなるのだ。

シェアはピーナッツなのにマーケティングは……

:日本では「日産自動車」という企業のブランドはそれなりにあると思っています。さっきフェルディナントさんは「技術の日産」とおっしゃってくださったけれども、日産という会社は少なくとも日本においては「技術」のイメージがまあまあある。

F:まあまあですか(笑)。

:でも世界には、技術どころか日産の名前すら全然知られていない国がいっぱいあるんですよ。

F:「What is NISSAN?」ということですか? 今どきそんな国があるんですか?

:あるんです。(副社長に就任してからの)この2カ月でそれが明らかになってきました。

F:日産という会社自体が知られていない。

:そう。知られていない。そのコ・ブランド(日産の名前を使わないサブブランド)となるともっと知られていない。それなのに大物ぶって「俺たちはグローバルブランドだ」、みたいな偉そうなマーケティングをしようとしているところもあるの。この前もある国の会議で、「あなたの国で当該ブランドのマーケットシェアはいくつですか?」と聞いたら、「0.7%です」と。それなのに0.7%のブランドがやるマーケティングじゃないようなことをやろうとしている。だから私、思わず「ピーナッツ!」って叫んじゃったのよ。

F:シェー!(イヤミ調)


 「ピーナッツ(peanuts)」は英語のスラングで、つまらないこと、とか、小銭、という意味である。さらには小さいアレという意味もあるのだが……。知人のネイティブに聞くと、そういった意味の場合は、単数形=peanutで使うことが多いそうだ。ビジネスの場では「peanuts」は、はした金、安月給、さらには価値のない仕事、というニュアンスで使われ、「You are working for peanuts.(直訳すれば、『君が今やっている仕事には価値がない』)」とか言うらしい。


:シェアはピーナッツのくせに、こんな大風呂敷の戦略を立てたって全く意味がないでしょ、と。本当にそういう感じですよ。

F:星野さんステキ。男らしい(はーと)。

広報・星野:あの……フェルさん。あとでちょっとご相談が……。

:大人になろうよ、フェルちゃん。な。