F:それじゃもう日産に入社した2002年当初から、「この会社はマーケティングに重きを置いていないな」と感じておられた。
星:いえ、特にそうは思いませんでした。私は、日産に入社した当初は“マーケットインテリジェンス”という、情報を分析していろいろな人や部署にアドバイスをする仕事をしていたので。あとはフォアキャスティング(Forecasting:過去と現在を起点に、未来を考える方法)という、わりと数字畑的な仕事だったので。「何台売れます」とか、「これから需要はこうなります」とか。
F:フォアキャスティング。未来予測ですね。
星:そう。だからエンジニアの人たちとも一緒に仕事をしていたし、彼らはお客様にすごく興味があるので、うんと熱心に話も聞いてくれた。フォアキャスティングは数字的な情報になるので、これはどのぐらい売れるのかとか、どんなタイプのお客様に刺さりそうだとか。
F:そんなところまで分析するんですね。
星:そう。トレンドはどうなのか。安全に対する考えはどうなるのか、とか。それをもっと落とし込んでいって、こういう安全装置はいくらで売れそうですよ、とか。(エンジニアたちは)それをすごく真剣に聞いてくるので。だから当初は、少なくとも「マーケティングの重要さを理解してくれない」という状態ではなかったんです。
F:なるほど。
Marketing & Salesなのに、実態はS&Sだった
星:だからM&S(Marketing & Sales)に配属されてからですね。
F:軽く扱われ出したのは。
日産広報・星野景子氏(以下、広報・星野):フェルさん! 変なふうに書かないでください!
GT-R田村宏志氏(以下、田):頼むよフェルちゃん。また田村が変なのを連れてきたって、俺が怒られる(苦笑)。
星:部署名はM&S。マーケティング&セールスなのに、その実体はMがない。セールス&セールス、みたいな。
F:やっぱり軽く扱われていたんだ(笑)。
広報・星野:あぁぁぁぁぁ……。
F:トヨタはセールスの力が圧倒的に強いけれども、日産はあくまでも技術が強いのかと思っていました。「技術の日産」ってキャッチフレーズもあるじゃないですか。
星:技術は強いですよ。フェルディナントさんの言った「技術の日産」。それを地でいっている感じ。ECメンバーを見たって分かるでしょう。エンジニアが圧倒的に偉い。
F:うーむ……。
星:エンジニアサイドも、マーケティングの価値というのを理屈ではよく分かっているんですよ。価値があることは分かっているの。でも今までは社内のさまざまな力学が働いて、うまく使いこなすことができていなかった。その反省に基づいて、今「ブランド、ブランド」と言っているんです。
F:今日のSUPER GTのようなレースも、ブランディングの1つになるわけですね。
星:もちろんレースもブランディングには大事なんですが、まだ全然レバレッジが利いていないと思います。まあこれは日産だけの問題じゃなくて、どのメーカーもうまくできてないとは思います。日本では特に。
F:ホンダなんかは最近レバが利いてきていませんか。F1で勝てるようになってきたし。
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