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 世界的に自動車の市場が縮小しつつある昨今。
 「マーケットが下がってきたときこそマーケティング」
 そして
 「名前を知っているとか、安心できるとか、そういう“ブランド”が大事になる」
と主張する星野副社長(前回はこちら)。

 日産のマーケティングとは何か。そもそも日産では、今までどのようにマーケティングを行ってきたのか。今回はその辺りから伺っていこう。

フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):日産というブランドをいかに高めていくか。つまりブランディングということですね。

星野副社長(以下、星):そう。会社にとって、ブランディングはとても大事なことです。そしてそれをやる人たちを育てるというのもすごく大事なこと。それと同時に、会社がマーケティングの大切さを理解すること、これもすごく大事。

どこのメーカーでも「マーケッターはつらいよ」

F:今までの日産は、マーケティングの重要さをあまり理解していなかったということですか?

:理解していなかった、とまでは言いませんが、何かと低く見られてはいましたよね。日産って、やはりエンジニア主導の会社なので。マーケティングは何か好きなことや意味のないことを理屈もなくおカネだけ使ってやって……みたいに捉えられてしまうので。

F:それはあらゆるメーカーに共通することですよ。マーケはいいよな。お気楽でハデで楽しそうで、とどこの会社でも言われています(笑)。

:好きなことをやって、お金ばかり使って……ね(苦笑)。

F:言われがちですよね。メーカーだと特に。

:セールスはまだいいんですよ。分かりやすい実体があるじゃないですか。

F:なにしろ外からお金を持ってくる部署ですから。数字が出るから成果としても分かりやすい。でもマーケティングは実体が掴みにくい。成果も数値化しにくい。

:本当は数値化できるんですけどね。でも今までの日産は、あんまりそれもやってこなかった。EC(Executive Committee:経営陣)のメンバーも、大半がエンジニアだし。あとは購買が多い。要はマーケッターが1人しかいないんです。

F:星野さんは何畑を歩んで来られたのですか?

:私はもうずっとマーケティングです。日産に入る前から、ずっとマーケティング。

F:日産に入社して何年になりますか。

:2002年の入社だから、今年で17年になりますね。

F:日産が今までで一番長い会社になりますか。

:はい。日産の仕事が一番長いです。


 星野さんは1983年に慶應義塾大学経済学部を卒業し、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に入行。1986年に退職して米ノースウエスタン大学ケロッグ経営学大学院に留学。1988年に経営学修士(MBA)を取得している。

 1989年から社会調査研究所(現インテージ)で主任研究員を務め、2002年、カルロス・ゴーン社長(当時)に請われ、日産自動車に入社して現在に至っている。