みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
今週も明るく楽しくヨタ話からまいりましょう。
またやってしまいました……本年2度目の骨折であります。
左足の小指がポッキリいっています。マジで痛いです。
理由は聞かないでください。「妙齢女性」「100mm」「クリスチャン・ルブタン」がキーワードです(笑)。
搬送された救急病院にて。慣れない様子のドクターに、不安は募るばかりです。
夜の9時すぎに搬送された病院で、当直の若いドクターが「こりゃ手術ですかねぇ」とか何か言うたびに、ベテランの看護師さんが「あの……明日もう一度来ていただいて、“ちゃんとした先生”に診てもらいましょうね」と言うのが印象的でした。この先生、ちゃんとしていないのか……。
けがで動けなくなったので、「久しぶりにメシでも」と話していた宮澤崇史選手は、拙宅にお越しいただくことになりました。
骨折なんてうまいメシ食ってシャンパン飲んでいればすぐ治るよ、と自ら腕を振るってくださる宮澤崇史選手。一流のアスリートは例外なく料理上手です。彼をモデルにしたドラマ「
絆のペダル」が24時間テレビで……と……土曜日に放送は終わっていました……。
家から徒歩圏内に、SALUMERIA 69という厳選された食材を提供してくれるデリカテッセンがあるのですが、ここの生ハムがまた素晴らしい。皿を持ち込むと、美しく盛り付けてくれたりもします。1人ひとりの接客時間が長いので、時間によってはエラく長く待たされることになりますが、ハム好き、チーズ好きにはたまらないお店です。
SALUMERIA 69で買ってきた生ハム。あの店もこの店も、実はここから仕入れているのです。「今日は気温が高いので、30分以内に召し上がれないお客さんには売れません」、と。
日曜日はクルマ関係のみなさまと地元の寿司屋で飲みました。
トヨタ、ホンダ、SUBARU、GMと会社を超えて、自由闊達に意見交換をいたしました。
栄寿司総本店にて。まだ日の高い午後4時から始めたのに完全満席。大変な人気店です。
4時間近くも飲んで食べたのですが、「飲みたりねぇ……」との声が。
それでは、と拙宅にお越しいただきました。ロクなつまみも出せませんでしたが、今度はゆっくりウチでメシ会でもやりましょう。
乾き物しか出せず失礼しました。次回はちゃんとやります。
さてさて、それでは本編へとまいりましょう。
日産自動車・星野朝子副社長インタビューの続編です。
世界的に自動車の市場が縮小しつつある昨今。
「マーケットが下がってきたときこそマーケティング」
そして
「名前を知っているとか、安心できるとか、そういう“ブランド”が大事になる」
と主張する星野副社長(前回はこちら)。
日産のマーケティングとは何か。そもそも日産では、今までどのようにマーケティングを行ってきたのか。今回はその辺りから伺っていこう。
フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):日産というブランドをいかに高めていくか。つまりブランディングということですね。
星野副社長(以下、星):そう。会社にとって、ブランディングはとても大事なことです。そしてそれをやる人たちを育てるというのもすごく大事なこと。それと同時に、会社がマーケティングの大切さを理解すること、これもすごく大事。
どこのメーカーでも「マーケッターはつらいよ」
F:今までの日産は、マーケティングの重要さをあまり理解していなかったということですか?
星:理解していなかった、とまでは言いませんが、何かと低く見られてはいましたよね。日産って、やはりエンジニア主導の会社なので。マーケティングは何か好きなことや意味のないことを理屈もなくおカネだけ使ってやって……みたいに捉えられてしまうので。
F:それはあらゆるメーカーに共通することですよ。マーケはいいよな。お気楽でハデで楽しそうで、とどこの会社でも言われています(笑)。
星:好きなことをやって、お金ばかり使って……ね(苦笑)。
F:言われがちですよね。メーカーだと特に。
星:セールスはまだいいんですよ。分かりやすい実体があるじゃないですか。
F:なにしろ外からお金を持ってくる部署ですから。数字が出るから成果としても分かりやすい。でもマーケティングは実体が掴みにくい。成果も数値化しにくい。
星:本当は数値化できるんですけどね。でも今までの日産は、あんまりそれもやってこなかった。EC(Executive Committee:経営陣)のメンバーも、大半がエンジニアだし。あとは購買が多い。要はマーケッターが1人しかいないんです。
F:星野さんは何畑を歩んで来られたのですか?
星:私はもうずっとマーケティングです。日産に入る前から、ずっとマーケティング。
F:日産に入社して何年になりますか。
星:2002年の入社だから、今年で17年になりますね。
F:日産が今までで一番長い会社になりますか。
星:はい。日産の仕事が一番長いです。
星野さんは1983年に慶應義塾大学経済学部を卒業し、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に入行。1986年に退職して米ノースウエスタン大学ケロッグ経営学大学院に留学。1988年に経営学修士(MBA)を取得している。
1989年から社会調査研究所(現インテージ)で主任研究員を務め、2002年、カルロス・ゴーン社長(当時)に請われ、日産自動車に入社して現在に至っている。
F:それじゃもう日産に入社した2002年当初から、「この会社はマーケティングに重きを置いていないな」と感じておられた。
星:いえ、特にそうは思いませんでした。私は、日産に入社した当初は“マーケットインテリジェンス”という、情報を分析していろいろな人や部署にアドバイスをする仕事をしていたので。あとはフォアキャスティング(Forecasting:過去と現在を起点に、未来を考える方法)という、わりと数字畑的な仕事だったので。「何台売れます」とか、「これから需要はこうなります」とか。
F:フォアキャスティング。未来予測ですね。
星:そう。だからエンジニアの人たちとも一緒に仕事をしていたし、彼らはお客様にすごく興味があるので、うんと熱心に話も聞いてくれた。フォアキャスティングは数字的な情報になるので、これはどのぐらい売れるのかとか、どんなタイプのお客様に刺さりそうだとか。
F:そんなところまで分析するんですね。
星:そう。トレンドはどうなのか。安全に対する考えはどうなるのか、とか。それをもっと落とし込んでいって、こういう安全装置はいくらで売れそうですよ、とか。(エンジニアたちは)それをすごく真剣に聞いてくるので。だから当初は、少なくとも「マーケティングの重要さを理解してくれない」という状態ではなかったんです。
F:なるほど。
Marketing & Salesなのに、実態はS&Sだった
星:だからM&S(Marketing & Sales)に配属されてからですね。
F:軽く扱われ出したのは。
日産広報・星野景子氏(以下、広報・星野):フェルさん! 変なふうに書かないでください!
GT-R田村宏志氏(以下、田):頼むよフェルちゃん。また田村が変なのを連れてきたって、俺が怒られる(苦笑)。
星:部署名はM&S。マーケティング&セールスなのに、その実体はMがない。セールス&セールス、みたいな。
F:やっぱり軽く扱われていたんだ(笑)。
広報・星野:あぁぁぁぁぁ……。
F:トヨタはセールスの力が圧倒的に強いけれども、日産はあくまでも技術が強いのかと思っていました。「技術の日産」ってキャッチフレーズもあるじゃないですか。
星:技術は強いですよ。フェルディナントさんの言った「技術の日産」。それを地でいっている感じ。ECメンバーを見たって分かるでしょう。エンジニアが圧倒的に偉い。
F:うーむ……。
星:エンジニアサイドも、マーケティングの価値というのを理屈ではよく分かっているんですよ。価値があることは分かっているの。でも今までは社内のさまざまな力学が働いて、うまく使いこなすことができていなかった。その反省に基づいて、今「ブランド、ブランド」と言っているんです。
F:今日のSUPER GTのようなレースも、ブランディングの1つになるわけですね。
星:もちろんレースもブランディングには大事なんですが、まだ全然レバレッジが利いていないと思います。まあこれは日産だけの問題じゃなくて、どのメーカーもうまくできてないとは思います。日本では特に。
F:ホンダなんかは最近レバが利いてきていませんか。F1で勝てるようになってきたし。
星:そうですか?
田:もう少しかなぁ。
F:まだダメですか。
田:要するに「クイズ100人に聞きました」を、レースを見に行かない普通の人を対象にやってみれば分かるってこと。「F1って知ってますか?」「誰を知ってますか?」と聞いたら、おそらくほとんどの人は鈴木亜久里、アイルトン・セナと出て、それで終わっちゃう。当時(バブル期、ホンダF1の全盛時代)は銀座のど真ん中で聞いたって、3割くらいの人が、セナ、プロスト、鈴木亜久里の名前は自然に出たわけでしょう。今は3人もいないよ。ハミルトン、フェルスタッペンって答えられる人なんて。まあそれは、今日のGTも同じなんだけど……。
F:うーむ……。
田:だから俺はさ……。
以降しばらく田村さんのレースに対する熱い思いが続く。
田村さんはレースの話になると止まらなくなるのだ。
シェアはピーナッツなのにマーケティングは……
星:日本では「日産自動車」という企業のブランドはそれなりにあると思っています。さっきフェルディナントさんは「技術の日産」とおっしゃってくださったけれども、日産という会社は少なくとも日本においては「技術」のイメージがまあまあある。
F:まあまあですか(笑)。
星:でも世界には、技術どころか日産の名前すら全然知られていない国がいっぱいあるんですよ。
F:「What is NISSAN?」ということですか? 今どきそんな国があるんですか?
星:あるんです。(副社長に就任してからの)この2カ月でそれが明らかになってきました。
F:日産という会社自体が知られていない。
星:そう。知られていない。そのコ・ブランド(日産の名前を使わないサブブランド)となるともっと知られていない。それなのに大物ぶって「俺たちはグローバルブランドだ」、みたいな偉そうなマーケティングをしようとしているところもあるの。この前もある国の会議で、「あなたの国で当該ブランドのマーケットシェアはいくつですか?」と聞いたら、「0.7%です」と。それなのに0.7%のブランドがやるマーケティングじゃないようなことをやろうとしている。だから私、思わず「ピーナッツ!」って叫んじゃったのよ。
F:シェー!(イヤミ調)
「ピーナッツ(peanuts)」は英語のスラングで、つまらないこと、とか、小銭、という意味である。さらには小さいアレという意味もあるのだが……。知人のネイティブに聞くと、そういった意味の場合は、単数形=peanutで使うことが多いそうだ。ビジネスの場では「peanuts」は、はした金、安月給、さらには価値のない仕事、というニュアンスで使われ、「You are working for peanuts.(直訳すれば、『君が今やっている仕事には価値がない』)」とか言うらしい。
星:シェアはピーナッツのくせに、こんな大風呂敷の戦略を立てたって全く意味がないでしょ、と。本当にそういう感じですよ。
F:星野さんステキ。男らしい(はーと)。
広報・星野:あの……フェルさん。あとでちょっとご相談が……。
田:大人になろうよ、フェルちゃん。な。
やっぱりブランドでしょう、最後に残るのは
星:そうしたらその日の夜、食事のときにピーナッツが出てきたんですよ。ボールに山盛りのピーナッツが。それで「Thank you」って(笑)。すごいモチベートしました。
F:やるなあ。その会社にはユーモアのセンスがある人がいるんですね(笑)。ちなみにどこの国の何というブランドですか?
星:●●の○○です。
広報・星野:あー! それは書いちゃダメ。本当にダメ。朝子さんもお願いします。この人本当に書いちゃうんで。
星:何か俺たちは技術の会社だ。テクノロジーブランドだとか言っているわけですよ。0.7%のシェアで。そんなの誰が知っているの? という話じゃないですか。
F:彼らが自ら主張する「テクノロジーブランド」に関しては、評価すべき部分もあるのですか?
星:それは日産のコ・ブランドだから、日産のテクノロジーを流用して、安価に造るというコンセプトのブランドなので。
F:つまり先程伺った、いうなれば市場がシュリンクする際に最初にダメになる、ハイブランドとは対極にあるブランドということですね。
星:そう。初めにダメになる。それなのに誰もそのブランドとは何か、世の中にどう受け止められているかを答えられない。
F:市場がシュリンクするときに、高いモノが売れなくなるんじゃなくて、逆に知っているから安心。だから買う。逆に聞いたことがなくて有象無象的なものはどんどん落ちていく。この現象は非常に興味深いです。これは中国だけでなく、世界的に通用する話なんですか?
星:世界的に見ても、やっぱりブランドでしょう、最後に残るのは。
F:なるほど。
星:マーケッターってね。商品を愛しちゃいけないんですよ。
F:え? 逆でしょう? 商品を愛さなければ売れませんよね。
星:ダメなの。大事に思うのはいいけれど、フォール・イン・ラブしちゃうとダメなのよ。
F:どういうことでしょう。
星:例えば次に中国で出てくるクルマ。すごくカッコ良くて、すごいパフォーマンスで、もうITとかも最先端のものが付いていて、ガジェットも充実していて、いかにも中国の人が好きそうなクルマが出るんですよ。
F:ほうほう。
星:そのクルマがね……。
と、いいところで以下次号。そろそろ会社に行く時間です。
骨折でも痛風でも会社は休めません。サラリーマンは辛いです。
それではみなさままた来週。
こんにちは、AD高橋です。
日産の持つ「ブランド」、その1つが「GT-R」であることは論をまたないでしょう。
富士スピードウェイで開催されたSUPER GT第5戦。日産はGT500クラスでMOTUL AUTECH GT-R(23号車)が3位表彰台に、GT300クラスではリアライズ日産自動車大学校GT-R(56号車)が54㎏のウェイトを積みながら、7位入賞を果たしました。
初代GT-Rとなるスカイライン2000GT-R(PGC10型)が登場したのは1969年2月。実は今年は、GT-Rが世に出てから50周年という記念すべき年なんです。
2019年4月、日産はGT-Rの2020年モデル、GT-R NISMOの2020年モデル発表に合わせて、「NISSAN GT-R 50th Anniversary」を公開しました。
NISSAN GT-R 50th Anniversaryは2020年3月末まで販売される期間限定モデル。2020年モデルのGT-Rプレミアムエディションをベースにツートンカラーの外装になっています。これは日本グランプリシリーズで活躍したGT-Rレーシングカーをモチーフにしたカラーですね。リアにはGT-R50周年のロゴがあしらわれています。
ボディカラーは3色用意されており、「ワンガンブルー」と命名された、ベイエリアでの日没の余韻をイメージしたブルーには、ボディカラーとコーディネートした50周年記念ロゴ入りのブルースポークホイールが標準装備に。
このホイールは走行中に高速で回転すると全体が青く見えるため、ボディカラーとの一体感がより高まるとのこと。
内装はミディアムグレーの専用色に。セミアニリンレザーシートのサイドに配色されたグレーが上品さとスポーティさを演出しています。
ほかにもメーターやドアを開けたときに見えるキッキングプレート、センターコンソールなどに50周年記念ロゴが入ります。
価格はカラーによって異なり、1319万2200円~1351万6200円(消費税8%込み)。現行型GT-Rはスカイライン時代のGT-Rとは販売状況が異なるため、将来的にR32~R34GT-Rのようなプレミアム相場が形成されるかは分かりませんが、それでも「GT-R」ブランドを愛する人々にはたまらないモデルであることは間違いありません。
この記事はシリーズ「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
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