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:できますよ。だってあんなアホみたいな性能のクルマを造れちゃうんですよ。その逆の方向のクルマだってできるでしょう。方向を変えるだけです。

F:ははは。アホみたいなクルマですか(笑)。

:アホでしょ(笑)。だから制度も含めて、今の世の中は何か間違っているよね、というふうに持っていかないといけません。でもそれは民間だけじゃ不可能ですよね。法整備もあわせて進めていかないと。それと教育ですね。今の70代、80代の人って、例えば交通安全の教育を受けてもらっても、素直に聞く人はたぶん1割もいないんじゃないかと思いますよ。だからもっと若いうちから、運転というものを教育する制度が必要です。大変な時間がかかりますが、これは本当に必要だと思う。

F:そうですね。年配の人に「今までのやり方を変えましょう」、あるいは「運転をやめてください」と言っても聞き入れてもらえない。

:聞かないですよね、普通は。若造が何を生意気言っているんだよ、というのがどうしてもある。

F:うーむ......。

レース中の辰己総監督(手前)。テキパキとスタッフに指示している。

我々は、優しさを運転でも忘れている

:こちら(ドイツ)に来て運転すると、日本との大きな違いを感じませんか? 弱者保護が徹底しているでしょう。どんなガラの悪い奴でも、横断歩道で歩行者が立っていれば絶対に止まる。もう絶対にです。それから速度の遅いバイクや自転車が走っていると、ムリに追い越したりせずに、じっと後ろで待つでしょう。それが日本だとクラクションを鳴らしたり、わざと幅寄せしたりする奴もいる。日本には何かそういうところがね、優しさがないなと。日本人は優しさをどこかに忘れてきてしまったような気がするんですよ。

F:昔は違いましたか? 日本の昔の道は、もっと優しかったですか。

:昔とは違いますね。だんだん悪くなってきている。それは教育が間違った方向に向かっているからじゃないかと思うんですよ。学校で勉強ができて、足し算が速く正確にできる子がいい子で。できない子は「ダメな奴」、と一律で分けてしまうような風潮があるでしょう。そのままの感覚で、カネを持っていいクルマに乗っている人は偉い人、すごい人。ボロいクルマだと、あいつは貧乏だ、というようなね。

F:……うーむ。うーむ……。

:人間的な優しさがどんどんなくなっているような。形だけ整えて、何かカッコいいことを言っていればいい、みたいな。そして子育てもロクにできないような親を量産してしまった。その親がまた無責任に子供をつくる。親子代々教育ができない。