ホンダが13年ぶりにF1での優勝を決めたので、少し間が空いてしまったが、SUBARUのニュルブルクリンク24時間耐久レースリポート続編である。
レース未経験のディーラーメカニックが、ニュルブルクリンク24時間耐久レースという世界の大舞台で戦い抜いたのは、6月28日の回でご報告した通り(こちら)。
それではそもそもニュル24時間とはどのようなレースなのか。どうしてSUBARUはこのレースにこだわり続けるのか。今回はそのあたりを深耕していこう。

お話を伺うのは、「SUBARUのカリスマ」「車両開発の鬼」と、何とも素敵な二つ名を持つ辰己英治総監督である。辰己氏は富士重工時代のSUBARUで長く車両開発に携わってきたお方で、ガタガタだった同社を救った不朽の名車「レガシィ」をはじめ、数々のクルマを世に送り出した実績をお持ちだ。
大変な大御所にお話を伺うのだが、何しろ所は「世界最大の草レース」と呼ばれるニュル24。レースが終わると同時にサポートトレーラーもサッサと片付けてしまうほど動きが速い。当然、気のきいたインタビュー用の会議室などあるはずもない。撤収作業真っ最中のトレーラー横に折りたたみの簡易椅子を並べ、ピクニック気分でのインタビューである。
F:それではよろしくお願いします。こんな露天の場所で恐縮なんですが……。
辰己総監督(以下辰):撤収作業の真っ最中ですからね。まあ気楽にやりましょうや(笑)。

F:まず、ニュルブルクリンク24時間というレースから教えてください。
辰:もともとここは「世界最大の草レース」と呼ばれています。本物のレーシングカーを造って参加するようなレースじゃなくて、腕自慢が集まって楽しむような場所……初めの頃はそんな感覚だったと思うんですよね。ハードルが低くて、要件さえ満たせば誰でも参加できちゃうような、そんな大会。そこで自分たちの造ったクルマの性能を競い合う。それがどんどんどんどん発展していって、メジャーになっていって、「そんなに人が集まるなら宣伝にもなるな」と、徐々にメーカーも集まりだした。そんなイメージですね。
F:なるほど。草レースだったのが、徐々にメジャーになっていって、ついにはメーカーのワークスまでもが参加するようになった。
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