山:そう。本当にケタが違う。そういう人たちがモノを造るためのアイデアを提供してくれるということが、F1の開発者にとっても、ものすごくいいインパクトになったと思うし、心に響いたと思う。だからMGU-Hなんて、今はもうまったく壊れる気がしないもの。2年前とは大違いです。
F:そんなに変わりましたか。
山:変わりましたね。もう全然別物です。2年前なんて、「またMGU-Hかよ」「またかよ」「また壊れたのかよ」というほどに壊れましたからね。特にバーレーン(GPのとき)なんか、もう付けたらすぐに壊れちゃった……くらいの勢いで調子が悪かった。そういう時期を経てきているので、畑違いでも研究開発のすごいエンジニアの力、考え方のひとつ一つが、同じモノ造りでもこんなに違うんだということを、F1の開発陣のみんなが知ることになりました。それが刺激にもなった。
F:墜落してしまったら困るから、飛行機は信頼性が非常に重要ということはよく分かるのですが、それじゃレースは何よりもパフォーマンス重視で、極端な話、「レースの間だけ持てばいいや」という考えがあったりするのですか?
山:ないです。それはない。例えば今年のF1のレギュレーションで言えば、21戦で3基のPUだから、平均すると1基当たりは7レースになりますよね。
F:21レースで3基のエンジン。21÷3=7ということですね。
外の文化を取り入れるのが、本田宗一郎流
山:そうそう。それで1レースはざっくり700kmくらい走るから、7レースで約5000km。だから1レースで壊れちゃ困る。だけど、レギュレーションにぴったりの5000km程度持てばいいという考え方はある。でも飛行機の場合は、絶対に落ちたらだめじゃない。
F:ですよね。アメリカまで飛べたからもういいでしょ、というわけにはいきません(笑)。
山:そう。そこの「違い」が、やっぱり「ケタ違い」なんですよ。そんな畑の人たちが見てくれたから、Sakura(ホンダのPU開発拠点、「HRD Sakura」)の開発チームも含めて、1つ上のステージに行けたような気がしますね。それが僕の正直な気持ち。今のMGU-H、本当に信頼性が高いもの。
F:「壊れる気がしない」って、すごいフレーズですよ。
山:本当に壊れる気がしない。実際に壊れないし。
F:全然違うフィールドの人の意見を入れるというのは、とてもいいことなんですね。刺激になる。
山:とてもいいことだし、もともとホンダにはそういう文化があるんですよ。外の文化を積極的に取り入れようという文化がある。異業種とも交流しているし。もともとホンダって、そういう会社なんですよ。
さあさあ、F1の話からホンダの企業文化の話に脱線してまいりました。
いいところですが。そろそろ会社に行かなくては。
サラリーマンはつらいです。今週は飲み会も少ないので、サッサと帰宅してたまりにたまった原稿を仕上げていく所存であります。それではみなさままた次回!!
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