F:そうか。メルセデスはコンストラクターでもあり、PUサプライヤーでもある。「レッドブル・ホンダ」的な言い方をするのであれば、「メルセデス・メルセデス」なんですものね。だから社長が上がっても違和感はない。
山:そう。僕らはパワーユニットのマニュファクチャラーなのであって、コンストラクターではありません。だからそういった意味では、ここで経営トップが出ていくのは絵的にどうよ、という話もあって。それでここは一番苦労している田辺を上げようという話になったわけです。田辺には倉石さんたちが言いに行きました。「勝ったらお前が表彰台に行けよ」って。

F:それで、本当に田辺さんがフェルスタッペンと表彰台に立つことになった。素晴らしい光景でしたね、感動的でした。
山:ね。あれは良かったね。
ホンダジェットのエンジンのノウハウを注入
F:ところで今回のエンジンは、航空機、ホンダジェットのエンジンを造っている技術陣から、特にターボの部分についてノウハウを供給してもらったという話をうかがいました。それが効いて一発で良くなったと。この話は事実ですか?
山:ああ、MGU-H(熱エネルギー回生システム、エンジンの排気で発電する)ね。事実ですよ。
F:どういうところが良かったんですか。
山:我々、モータースポーツの部隊だって、もちろん思い切りシビアに仕事をしているんだけど、飛行機はまたそのシビアさのニュアンスが違うわけ。
F:シビアさのニュアンスが違う。
山:そう。だって飛行機って、ひとつ間違えれば墜落して大事故になるじゃないですか。簡単に言うと、信頼性に対する考え方の数値レベルが違うんですよ。4輪の開発の現場で考えているリライアビリティー、信頼性の係数と飛行機の係数は、もう本当にケタ違いに違う。よく「ケタ違い」って言うけれども、比喩表現じゃなくて、本当に数値のケタが違う。

F:なるほど。信頼性に対する考えのケタが違う。
Powered by リゾーム?