F:今回は最初から勝つつもりでスタートしたということですか?
山:勝つつもりというか、流れをつかめればいけるな、というイメージです。他のチームだって、みんながみんな毎回100%のパフォーマンスを出せるわけじゃ、100点の仕事ができるわけじゃない。絶対にどこかにチャンスはある。流れは来る。でもその流れがどの方向から来るのか、またどのタイミングで来るのか、それはまったく分からない。分からないけど何となく来そう。だから一応準備はしておくか、という感じですね。
「勝ったら、表彰台はホンダが上がってくれ」
F:レース前に、何か流れを感じさせる兆候はありましたか。
山:ありました。一番気持ちが高ぶったのが決勝前の日曜日のランチ。レッドブル創業者のマテシッツさん(ディートリッヒ・マテシッツ氏、レッドブル総帥、Red Bull Racing オーナー)と、ドクター・ヘルムート・マルコ(レッドブル・ホンダ モータースポーツアドバイザー)と、うちの副社長の倉石(誠司氏)、コミュニケーション本部長の森山(克英氏)、それと僕の5人で食事をしたときの話です。レッドブルのホスピタリティハウスのテラス席で。そこでレース直前のコミュニケーションをしていたら、最後に「今日勝ったら、表彰台にはホンダが上がってくれ」という話になってね。

F:それはどういう……。
山:優勝したら、普通はドライバーとともにコンストラクター(この場合はレッドブル)の人間が表彰台に上がるんだけど、今回はPUサプライヤーであるホンダが上がっていいぞ、と。
F:本当はコンストラクターが上がるものなのですか。
山:本当だったら、レッドブルのエンジニアが上がるものです。「(ドライバーである)マックス側のエンジニアが、マックスと一緒に上がる」というのが通常なんですね。だからメルセデスが勝っても、チーム代表のトト・ウォルフは上がらないじゃないですか。だいたいはエンジニアが上がる。あそこは本来コンストラクターのものなので。

F:なるほど。しかし今回は、勝ったらそこにホンダの人間を上げると。
山:そう。マルコさんがそのように言ってくれた。そこで僕らも話をして、もうここは田辺だろうと。田辺を上げようとその場で決めたんです。
F:その場にはホンダの副社長もいらしたのですよね。社長とか副社長とか、そういう偉い人が上がるような雰囲気ではないのですか。
山:いや、そんなことはありません。実際に過去にはメルセデスの社長が立ったりしていますから、別に副社長が上がっても変ではないです。でも基本はコンストラクターが上がるべき場所なので。弊社で言えばモトGPはホンダがコンストラクターなので、そこでは倉石も立っているし、森山も立っている。
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