F:フェルスタッペンもそうだし、それからメルセデスも正面から突っ込んでグシャグシャになった。フェラーリもコースアウトして、あわや、というシーンがありました。

:ラバーが乗らず(※)、まだ路面が完全にいい状態じゃない段階なのに、みんなガンガンに攻めていました。プラクティスでやっちゃったのは、フェルさんの言う通り、ウチにメルセデスにフェラーリの3台です。逆に言うと、やっぱりトップチームはプラクティスからギリギリで攻めているということです。本当にクラッシュする紙一重のところで戦っている。やっぱり本気なんですよ。本気で「勝ち」を取りにきている。

※熱を持ったタイヤが溶けて路面に付着することを「ラバーが乗る」と表現する。グリップが向上し、荒れた路面がスムーズになるので、結果としてタイヤの消耗も小さくなる。

F:レースを振り返ったご感想をお聞かせください。

今回はリスクを負っても攻めよう

:さっきも言ったけど、今回は多少リスクを背負ってもいいから攻めて行こうよと、レッドブルのホームコースでもあるわけだし、彼らも気合十分だから、俺らもガンガンに攻めていこうよと、そんな話を田辺としていました。

 金曜日のプラクティス。確かにマックスはぶつけちゃったんだけど、走りは最高に良かった。「これはいける」という感触がありました。そして土曜日の予選ではハミルトンがペナルティーを受けて、結果的にマックスが2番手でフロントロウ(前に他のクルマがいない、最前列)を取ることができた。ハミルトンのペナルティーという偶然はあるものの、我々ホンダが努力をして頑張ってきたことに対して、何か大きなフォローの風が吹き始めている……こんな感じがありました。何か今回は違うな、いけちゃうな、みたいな。

F:今回は違うなと。なるほど。

:だから土曜日には悠介(※)に、「明日は勝つから、お前ちゃんと準備をしておけ」と言ったんですよ。でもあいつ、意味が分からなくて、「はぁ? 山本さん、なに言ってるんですか?」と、キョトンとした顔をしていましたけど(笑)。

※鈴木悠介氏:英国在住のホンダF1 PR担当。ホンダでF1に携わりたいがゆえに、新卒、中途、中途、と実に3回も採用試験を受けてようやくホンダに潜り込んだ努力……というより執念の人。この方にもインタビューしているので、近いうちに公開する予定です。しかし同じ会社の試験を3回も受けるかねぇ……諦めるでしょ普通は。

3度目の正直でついに入社した、ホンダのスズキさん(写真中央)。彼の面白エピソードは後日たっぷりと。
3度目の正直でついに入社した、ホンダのスズキさん(写真中央)。彼の面白エピソードは後日たっぷりと。

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