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 勝てば「効果的な販促活動」、「技術力の向上」、「従業員の士気向上」と好意的な解釈もされようが、負けが続けば単なる「酔狂」と呼ばれてしまう。

 やるからには勝つしか、勝ってファンを味方に付け、アンチを黙らせるしか道はないのだ。

 レース開始時、フロントロウ(最前列)という好位置からスタートしたフェルスタッペンだったが、チームの母国グランプリで気負い過ぎたのか、痛恨のスタートミスで、いきなり7位に転落してしまう。頭を抱え、天を仰ぐレッドブル・ホンダ首脳陣の顔が、メディアルーム前方に設えられた画面に大写しになる。

 スタンドを埋め尽くす揃いのオレンジTシャツを着たフェルスタッペンの大応援団からも、悲痛な叫び声が響く。

勝利のシャンパンを掲げてファンの声援に答える田辺TD。

「今日もダメか」をひっくり返した人々

 今日もダメなのか……そもそもホンダは来年以降もF1を続けられるのか……ネガティブな思いばかりが脳裏をよぎる。しかし今日のフェルスタッペンは、そして今日のホンダは“何か”が違った。危なげなくオーバーテイクを繰り返し、着実に順位を上げていく。ピットインを遅らせて、後半に向けてタイヤを温存した戦略も良かったのだろう。50周目にはベッテルのフェラーリを抜き去って3位まで上がる。その先でボッタスのメルセデスも抜き去り、残すはフェルスタッペンと同い年の強敵、フェラーリのルクレールだ。

倉石誠司副社長と握手をする田辺TD。やはりウルウルされている。

 「猛攻」という言葉があるのなら、「猛守」という言葉があってもいいだろう。

 牙を剥き襲いかかるフェルスタッペンを、ルクレールは耐えに耐えてよくしのいだ。だがラスト3周で、ついにトップの座を明け渡す。フェルスタッペンの勢いはそのまま止まらず、「逃げ切る」というには大き過ぎる差をつけて、そのままゴールと相成った。

 ホームグランプリに錦を飾ったフェルスタッペン。
 歓喜に沸く観客。涙にむせび声をつまらせるホンダの男衆。
 F1という世界の大舞台で勝つということはつまり、広報・松本さんの言う通り「こういうこと」なのだ。

コーフンしてフェンスによじ登るファンの青少年。つまり勝つとは「こういうこと」なのだ。