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:メルセデス・ベンツで、人気があるから、値段を高くしてもいいだろう、という話は通りませんので。

F:木下さんは、MBJに入る前にどんなお仕事をされていたのですか?

:国産の自動車メーカーにおりました。具体名は申し上げられませんが、「走るのが楽しい」を標榜するメーカーです。そこでセールスマンをやったり、あとは技術部門の人事をやったり。まぁ文系の仕事ですね。当社に転職してからは、中古車の販売促進をやりました。認定中古車制度を運用したり、販売の促進をしたり。どんな雑誌に宣伝を打つか、とか。

F:中古車の価格維持はメチャ重要ですからね。あまりに中古価格が安いと、やはり新車販売にも響いてくる。すごいね木下さん。面白いね。

:ありがとうございます。それからセールスマンのモチベーションアッププログラムをやって、商品企画をやって、今が広報です。

マイトのY:なるほど非常に興味深いキャリアですね。それではそろそろGLCのお話に移らせていただいて……。

F:商品企画は価格設定だけでなく、日本市場に向けて車両をローカライズさせるお仕事もあるのですよね。ゴルフバッグが入らない問題とか(笑)。

「キャディーバッグ4つ」ってどういうこと?

:10年先を見据えてのパワートレインのラインアップの検討も行いますし、フェルさんのおっしゃる通り、「荷室をこういうふうに変えてほしい」と本社に要望を出すこともあります。でも実は、GLCクラスのクルマでも、「ゴルフのキャディーバッグを4つ積みたい」という要望は、アメリカからもヨーロッパからもないんですよね。

F:へぇ? ヨーロッパは何となく分かりますが、アメリカからも出ないですか? アメリカの人はやたらとゴルフをしますよね。

:確かにゴルフはするのですが、アメリカは徹底したクルマ社会なので、1台のクルマに4人も乗らないんです。基本1人に1台なので。

F:みんなの家を回って、交通費ワリカン、なんてことは向こうではやらないんですね。もうミニバンを買ったヤツが負け、みたいな話はないんだ(笑)。

:ええ、だからドイツ本国の開発の人と話してもいまひとつ伝わらないんですよ。日本はフルサイズのキャディーバッグを使う人が多いじゃないですか。でもヨーロッパの人は、軽めのクラブで、自分でヒョイと担いで回る人も多い。なので「え? 日本人はみんなプロみたいな大きなツアー用バッグなの? それを4つも積みたい? ちょっと意味が分からないんですけど……」とか言われてしまって(苦笑)。

F:あー(笑)。そりゃアッチの人には分からんよなぁ……。

:いくらメールでやり取りしてもらちが明かないから、自分が出張する前に中古のクラブを買ってキャディーバッグにフルセットを詰めて、ドライバーにはモコモコのヘッドカバーまで付けて、本国の開発部門に4セット送りました。送った後に私が現地に行って、「これが積めないと困るんだ」と。向こうは平気な顔で、「いや、やっている、やっているから」と言うんですよ。でも現地に行って見るとCAD上でやっているという体で。確かに設計上は入るんですよ。寸法的には「入る」んだけど、「入れる」動作がないんです(笑)。

F:あはははは。ウケる。入るんだけど入れられない。いいですね、最高にいいお話です。