全7195文字

 娘とゆっくり話す機会などめったにないのだが、密室状態の車中。しかもスキーへ向かう高揚感からか、お互いによく話した。そろそろ卒論の準備にとりかかること。インターンが始まること。就職先はどこにしようか決めかねていること。未曾有の売り手市場は本当のようで、「就職をどうしたらいいか悩む」のではなく、「どこに就職したらいいか悩む」のである。我々の時代とは大違いだ。彼女たちは後に「バブル世代」と呼ばれたりするのだろうか。
 何にしても就職できないで悩むよりはマシである。

 GLCは巷で悪評高かったGLKの後継に当たるクルマである。
 名前の通りCクラスのSUV版で、今やCクラスはクーペにセダンにステーションワゴン、カブリオレ、そして2種類のSUVと、6つのボディタイプを持つ車種となった。こんな調子でAでもEでも展開されるのだから車種も増えるわけだ。Sのステーションワゴンが出たら面白いのに。

 GLCクーペのボディサイズは全長、全幅、全高がそれぞれ4735mm×1930mm×1605mm。
 先代GLKよりもかなり立派になっている。乗り心地は先代と比べるのもアホらしいくらいに良くなっていて、特に直進安定性がいい。これは、ホイールベースが120mmも延ばされたことによるのだろう。

 Cクラスと同じプラットフォームを使っているのだが、ホイールベースはCのセダンよりも35mm長い。高速道路を走っている限りは、極端な横風でも吹かなければCのセダンよりも乗り心地が良く安心感も高い。主観だが、船でも飛行機でも自動車でも、乗り物は大きければ大きいほどラクチンなのである。

娘は横でスヤスヤ寝息……。

 中央道から長野道に入る。チラチラと雪が舞っているが積雪はない。
 娘は既にスヤスヤと寝息を立てている。ヨコに乗る時は何が何でも起きているべきことをそのうち教えねばなるまい。

 信州中野ICで降りて志賀中野有料道路に入る。無人の入り口には賽銭箱のような料金徴収機がある。100円を投げ込んでゲートを開ける。雪はいよいよ本格的になってきた。4MATICの本領発揮である。金曜日の夜だが、昔のように夜行バスが連なって走るような風景は見られない。路面には結構な雪が積もっている。右に左にヘアピンカーブが続く。オーバースピードで突っ込んでも、電子制御がいい塩梅で介入し、何の不安もなくスッと抜けていく。

 このままでは面白くないので、雪が深く積もった駐車場に入ってグリグリと走り回ってみた。何をやっても破綻しない。どこまでも安心のM・ベンツである。

雪が深くても何の心配もない。

 あまりグリグリやったので、娘が目を覚ました。

:怖いわ。あまり乱暴な運転をしないでよ。

F:ゴメン。でもこれも仕事でね。クルマの限界性能を試しているんだ。

:そういえばお友達が、パパみたいにクルマの記事を書くお仕事をしたいんだって。どうしたらいいか聞いておいてくれって。