全6708文字

F:入社された当時は、ちょうどホンダF1第3期の撤退時期に当たってしまったのでしたよね。

:ええ。でも入社当時は自分自身、エンジンに対する理解が全然なかったので、会社に入ってF1が始まる前までにいろいろと勉強できた、勉強しておけたというのは、いま考えるととても良かったのかな、と思います。チャンスはいつ来るかわからないので。

F:これからどうしたいですか?

:勝ちたいです。まずは勝ちたい。勝って勝って、チャンピオンになりたいです。僕が「F1やれて良かった。楽しかった」と一人で喜んでいても仕方がないので。ホンダは勝つためにF1をやっているので。

F:ホンダはいつごろ、勝利を掴めますか?

:今年。遅くとも来年ぐらいに勝てないといけませんよね。会社としても、F1を継続していくかどうかわからないので。僕らもそうですし、何よりホンダは勝つためにやっているので。

F:ホンダは勝つためにF1をやっている。

:そりゃそうですよ。勝たなければ、高いお金を払って自分たちを悪く見せているだけじゃないですか。

30代半ば、チャンスはいつかやってくる

F:なるほど。ご自身がホンダの看板を背負って仕事をしているという感覚はありますか?

:もちろんあります。非常にあります。ですから、すごいプレッシャーです。自分の判断一つで、簡単にエンジンを壊せる。ドライバーも傷つけられる。これは大変なプレッシャーです。

F:そうか。湊谷さんの判断一つで、ドライバーが死んでしまうことだってあり得るわけで。

:あり得ます。

広報松本:あのねフェルさん。「死ぬ」とかそういう言葉はあんまりね……。時間も過ぎてますし。

F:それじゃ本当にこれで最後。読者のみなさんに、特に同年代の人に向けて一言お願いします。みんないろいろ悩んでいる方も多いと思うんですよ。30代の半ばという年齢は。

:チャンスって、いつ転がり込んで来るのか誰にもわかりません。わからないんだけれど、その日のために、いつか来るチャンスを掴むために、常に準備をしておくってとても大事なんだと思います。クサイ言い方なんですが、どんな環境に置かれても、諦めることなくやるというのは、やっぱりすごく大事です。それが次につながるのだと思います。

F:わかりました。レース最中のお忙しいときに、本当にありがとうございました。

:ありがとうございました。

 F1の最前線で戦う若きエンジニア湊谷さん。

 インタビュー後に「ここまで必死にやっておられるのですから、何としても勝ちたいですね」と声をかけると、「必死にやっているのはウチだけじゃありませんから。敵もみんな勝つために必死ですから」とサラッと答えが返ってきたのが印象的でした。

 そう。必死で戦っているのはホンダだけではありません。メルセデスにもフェラーリにも、湊谷さんのような熱きエンジニアがいて、寝食を忘れ、心血を注ぎ、会社の看板を背負いマシンのセッティングに当たっています。

 頑張ってほしい。そして勝ってほしい。ホンダF1チーム。応援しています。

日経ビジネスから『カリスマ失墜 ゴーン帝国の20年』『マツダ 心を燃やす逆転の経営』の書籍2点を刊行!

カリスマ失墜 ゴーン帝国の20年

倒産寸前の日産自動車を再建し、カリスマ経営者の名をほしいままにしたカルロス・ゴーン氏。2018年11月に突如逮捕され、権力の座から転落した。ゴーン氏とは、いったい何者だったのか? いかにして絶対権力を握ったのか? その功罪とは? 転落の背景には何があったのか? 「日経ビジネス」が追い続けた20年の軌跡から、ゴーン氏と日産・ルノー連合の実像に迫る。


マツダ 心を燃やす逆転の経営

「今に見ちょれ」──。拡大戦略が失敗し、値引き頼みのクルマ販売で業績は悪化、経営の主導権を外資に握られ、リストラを迫られる。マツダが1990年代後半に経験した“地獄”のような状況の中、理想のクルマづくりに心を燃やし、奮闘した人々がいた。復活のカギ「モノ造り革新」の仕掛け人、金井誠太氏(マツダ元会長、現相談役)がフランクに語り尽くす。改革に使われた数々の手法の詳しい解説コラム付き。※本書に収録しきれなかった、モノ造り革新のキーマンたちのインタビューを掲載中→「「モノ造り革新」のリアル-マツダ復活の証言