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 全21戦。ホンダF1のすべてのレースに帯同し、ドライバーとレーシングカーの“間を取り持つ”若きF1エンジニア、湊谷圭祐さんへの密着インタビュー続編。

 全エンジニアの憧れの対象でもあるトップエンジニアは、何を考え、何に悩むのか。

 量産車の開発とは大きく異なる、「究極のクルマ」のエンジニアリングとはどのようなものなのか。さらに詳しく伺います。

(写真提供:ホンダ、以下同)

 現在のF1マシンの動力源は、エンジンとエネルギー回生システムが複雑に組み合わされた、「パワーユニット(PU)」なるものが搭載されている。“馬力”に力点を置いたエンジン開発から、“エネルギー効率”を追求したPUの開発にシフトしているのだ。いかにF1といえども、燃費を意識しなければいけない時代になったのだ。

エネルギー回生はブレーキと排気の二本立て

 前回(こちら)は量産車のターボ搭載車両に必要な、「ウェイストゲート」の仕組みについて途中まで伺っていた。尻切れトンボの形で終わってしまっていたので、その部分からお届けしよう。

湊谷さん(以下湊):暴走族でも一般車でも、あれ(余分な圧を逃がすウェイストゲート)は必要なものです。あれがないと際限なく回り過ぎちゃうので、どこかでコントロールしなきゃいけないわけです。壊れる手前で。ターボ車であれば必ず付けるものです。で、ここからが我々のPUの話です。

F:F1のエンジンには、ウェイストゲートが付いていないとか……。

:いえ。F1にも付いています。付いているのですが、市販車とは違う仕組みです。上がり過ぎた圧を逃がす部分にMGU-H(MGU はMotor Generator Unit 運動エネルギー回生システム、モーターと発電機を兼ねるユニット)が付いて、それがブレーキの役割をするんです。これがあると、回転数を必要なところで抑えられる。

F:F1のエンジンにもウェイストゲートはある、という理解で正しいですか。

:その理解で正しいです。ここで発電したエネルギーを、MGU-Kというもう1つのモーター・発電機のほうに流してあげる。このMGU-Kはタイヤにつながっているので、加速に使えるわけです。MGU-Kは、発電も加速もできるので、ブレーキをかけると、そのエネルギーをバッテリーに蓄電できるようになっています。

F:なるほど。二本立てで電力を作っているんですね。F1はスタート時に満充電の状態で出るものなのですか。

:もちろん満充電の状態でスタートします。

F:そんなシーンはレースではあり得ないのでしょうが、モーターの力だけでも少しは走れるものなのですか?