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F:でもまぁ他のレースは続けていたのですよね。GTとかMotoGPとか、インディもやっていたでしょうし。

:いや、自分的にはやっぱりF1なんですよ。F1と他のレースはぜんぜん別物ですから。

「湊谷君の気持ちも分かるんだけど……」

F:それでもともかく就職した。最初に配属されたのはどのような部署だったのですか? 新入社員をいきなりレース部門、というわけにはいきませんよね。

:もちろんそうはいきません。最初は量産のエンジン開発部門です。そこでOBDを担当していました。

F:OBD。オンボード、ナントカ……えーと、何の略でしたっけ?

:オン・ボード・ダイアグノーシス。故障検知をしたりする自己診断機能です。一酸化炭素とかススとかが規定値より多く出てしまう排ガスのトラブルがあるのですが、私はそれを検知して、ランプを点けて知らせるような機能の開発を4年くらいやりました。

F:そこから、どのようにしてF1のエンジニアになったのですか。

:ホンダは年に3回、評価と今後の進み方について上司と話し合う機会があるんですが……。

F:それは夏冬の賞与のときと。

:そうそう。夏冬のボーナスを貰うときと、あと期末ですね。3月、6月、12月。そのときに「今の君の評価はこうだよ」というのと、「それでこれからどうしたいの?」ということを話し合うんです。で、そのときに必ず「僕はF1をやりたいですね」と。

F:上司のほうも困りますよね。「湊谷君の気持ちも分かるんだけど、いまウチはF1をやっていないからねぇ……」としか答えられない(笑)。

:そうそうそうそう(笑)。でもある日、上司の言い方が急に変わって、「お前、今でもレースに興味があるか?」「海外勤務でも構わないか」と。

F:おお!

:もちろんです、と即答して。でもまだこの段階では具体的にF1の話は出ていませんでした。裏の話をすると、2012年にF1挑戦の事前検討メンバーが極秘で集められて、13年の年初に設計系のメンバーに声がかかり、5月ころにテストとか制御とかの研究系に声がかかってジワジワと進めていたんです。

F:社内外には一切秘密で。