米:必要ないと思っているからです。そこがすごい売りとは思えないんです。ああ、数字も出すところは出しますよ。例えば最小回転半径とかアプローチアングル、デパーチャーアングルとか。でも最大登坂角とか、そういうのは不要かなと思っています。ジムニーに乗っている本職の方って、みなさんもう自分の感覚でやっていますので。うまくなればなるほど、自分の感覚を大事にするんですよ。それで、これ以上行ったらヤバいな……というのが分かるので。落ちるの転がるのっていうのは、単純に物理現象なので。
F:なるほど。だから数字は出さない。必要ない。
数字は大した問題じゃないんです
米:数字は大した問題じゃないんです。安全にどこまで行けるか、ということこそが重要なので。ジムニーを仕事で使っている人、特に林業の方たちというのは本当にいろいろなところに行くんですよ。私もインタビューで林業の現場に行ったことがあるんですが。
F:山の中に?
米:山の中に。本当の崖とか。林道というよりも獣道と言ったほうがいいような道とか。うんと狭いところに自分で見に行って、特に雨が降った後なんか、道がどう変わっているかというのを見ながら。そんな現場で、「こういうところは先輩じゃないと行けない。自分はまだムリです。自分がこれ以上行ったら落ちます」なんて話が出るわけです。
F:ひゃー。リアル……。
米:ジムニーはそういう人たちが仕事で使っているので。レジャーももちろんですが、プロの人たちが、より安全に、より安心に乗っていただければ、という思いが我々にはあるので。そうなるともう、数字じゃないんですよね。数字じゃ言えないんですよ。台風の後、道が掘れちゃっていたり、川になって流れていたり、なんて現場が本当に普通にあるので。そんな場所に角度とか関係ないですよね。
F: すさまじいなぁ……そうしたプロの方は、みなさんやはりMTなのでしょうね。ATは使わないのでしょうね。
米:いや、それはMTもATもありますね。両方です。
F:それは意外です。プロはMTに乗るものとばかり思っていました。
米:まあMTのほうが、いろいろなことができますのでね。それを好まれる方もいらっしゃいます。でもATの方も多いですよ。
F:ATでも、四駆のローに入れれば大抵のことはできてしまうと。
米:その通りです。新しいジムニー乗りの人たちにも満足していただけるかなと。そういう思いで造りましたので。それプラス、このデザインですね。一般のお客様にも、このデザインを評価していただいています。ジムニーは決して敷居の高いクルマではありません。
F:デザインと言えば、新しいジムニーは本当にカッコいい。オーバーフェンダーの付いたシエラのほうは特にカッコいいです。
米:シエラは今回トレッドを大きくしたんです。タイヤをちょっと外に出して。今回は特に1.5Lのエンジンを積んだこともあって、高速安定性も考えてあります。
F:前のモデルのシエラは何Lでしたっけ?
米:1.3Lですね。プラス200cc。それでもエンジン単体としては旧型のエンジンよりも軽くなっているんですよ。世代が1つ新しくなったものですから。排気量も上げて、トレッドも広げて、高速安定性……というか、高速をゆったり走れるような形に仕上げてあります。我々はあのクルマを欧州に持ち込んで、じっくりテストしています。
F:なるほど。シエラは欧州での販売を意識して高速走行性を重視した。日本のシエラとはどのあたりが違うのですか。やはりサスペンションを硬めにしているのですか。
ジムニーのイメージカラーは「目立ち」と「隠れ」
米:あのままです。ハンドルの位置以外は、日本仕様と全く一緒です。そうそう、デザインと色も機能のうちの一つだということで、今回はグリーンとベージュの2色がイメージカラーになっています。要は「目立ち」と「隠れ」ということです。
例えば山岳救助隊は、オレンジ色とかうんと目立つ服を着ていますよね。目立つということそのものが機能なんです。反対に隠れたほうが、景色と同化してくれたほうがいいシチュエーションもある。そういうコンセプトを具現化しました。今回のカラーは、ファッションよりも機能で色を作り込んでいきました。
F:なるほど。「色も機能」。これもジムニーらしくていいエピソードですね。
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